部屋に走り込んできた私を、ルナもアラシさん達も驚いたように見つめ返した。

「…何かあったんですか?」

アラシさんの声で我に戻る。
目を見開いたまま三人の顔を確かめ、勢いよく首を横に振った。

「な…何もないよ!ちょっと…緒方さんに文句言ってきただけ…」

言いに行って、反対に言い返されて、それから……


「……お姉ちゃん?…顔色悪いよ…?」

泣きはらしたルナの顔が近くにある。
言われてハッとする。
顔はともかく、手が震えて、すごく冷たくなってた。


「…大丈夫……?」

近づくトドロキさんにビクついて、思わず避けた。
キョトンとされて、ますますマズい…と思った。

「だ、大丈夫です…いつもみたいに言い返されただけだから…」

慣れてること。
自分ではそう思って乗り込んだ筈だったのに……


……ぞっ…とする程、怖かった。

緒方さんが、いつもの緒方さんに見えなくて。
それに、あんなふうに押し倒されて……


ぶるっ…と寒気がして体を抱いた。
あんなことになるなんて、思いもしなかった。


…礼生さんは変だった。
何かに迫られてるような感じで、妙にイライラしてた。



「……緒方さん最近、ペンが進まなくてイラついてたからなぁ…」

アラシさんの声に振り向いた。

「オレらがいると返って焦るみたいでさ。だから、オレ、ルナちゃんを引き入れて、気を紛らせてやろうと思ったんだけど…。なんか返ってマズかったね。…ごめん、ルナちゃん…」