「御乗船の皆様にお知らせいたします。次の連絡船18便は、大時化の為、欠航とさせていただきます…」

1985年3月15日、瀬戸内海は未曽有の時化に襲われていた。夕方の高松行き18便は、この影響で欠航になってしまった。

「18便欠航か…どうしよう」

高松から岡山市内の高校に通う天羽春香(あまはねはるか)は深い溜め息をついた。
海が今こんな感じだから、今日は最終便までこのままだろう。
(友達の家にでも泊めてもらわなきゃ…)
そう思う春香だったが、公衆電話は今長蛇の列が出来ていて、とても電話なんか出来る状況じゃない。

「取りあえず座ろ…」
近くのいすに腰掛け、辺りを見回した。
その時…

「何かお困りですか?」