――「おはよー!」


1-5と書かれた教室名が出入り口のドアの上方に掲げられている教室に入った私。

最近初めての席替えが行われて、後ろから2番目の窓際という快適な席を手に入れた私は、真っ直ぐに自分の机に向かった。


『おはよー、遥!』

「あ、おはよう!」


机の上に通学カバンを置いて席に着いた私に明るい声を掛けてきたのは、友人の田淵 明日香。小学校からの親友で、私のよき理解者だ。

私が今すこぶる気分が良いのを早速察知したのか、明日香は私の顔を見た瞬間にニヤリと口角を上げた。


『何々~?遥ー。アンタ、何かいいことあったでしょー?』

「やっぱり、明日香も分かっちゃう?」


明日香といい修哉さんといい、私を一目見ただけで私の状態が分かるなんてすごすぎる。

それは単に2人の察知能力が鋭いだけなのか、はたまた私が分かりやすすぎるだけなのか――…。


「実はね、朝の稽古でおじいちゃんに褒められたんだ~!」

『……何だ、そっちか。』


満面の笑みで気分が良い理由を話せば、それを聞いた明日香はあからさまに期待外れと言うような落胆の表情を見せたのだった。