――翌日。


『はぁあっ!?黒王子にキレて帰ってきたぁ!?』


登校してすぐ、席に着いた私は明日香にとてつもなく怒られていた。

バッカじゃないの!?それとも、本当のバカなの?と、ご立腹の明日香の口から酷い言葉が次々と放たれていく。


「うう……そこまで言わなくたっていいじゃんか…。」

『うっさい。黒王子の写真、一枚も撮ってこなかった遥が悪いんじゃない。』


――え、怒ってるとこそこなの?

どうやら、明日香が怒っている原因は、私が黒王子とモメたことではなく、私が明日香との約束を守らなかったところにあるらしい。

拍子抜けしているところに、明日香にギロリと睨まれた私は、すぐにピンと背を伸ばした。


『短気は損気って、よく言ってるでしょ?だいたい、薔薇園デートは遥が壊した黒王子のスマホの弁償だっていうのに、アンタってば……。』


はぁああー…と、頭上から盛大に吐き出される溜め息。

呆れて言葉も出ない、とでも言いたげな明日香に対して、私はもう何も言えなくなってしまった。


『・・・それにしても、』

「ん…?」


数分経って、やっと気を静めてくれた明日香が、神妙な口ぶりで言葉を発する。


『河上 栞奈ね……。』

「??…明日香、河上さんのこと、知ってるの?」