ケータイ小説 野いちご

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Episode 6 思い



夜もふけてきた頃――



1人の三十代前半のサラリーマンがプレゼント用の包装がされた大きな紙袋を左手に、スマホを右手に持って、人気の無い寂れた路地を走っていた。

全速力で走っている為か呼吸は荒く、オールバックにしていた黒髪は乱れている。



『あなた、まだ着きそうにないの? もうすぐアヤの誕生会が始まるわよ?』

「ハアッハアッ、だから今っ、急いでるんじゃないか。あと、15分くらいで着くから待っててくれよっ」


受話口から聴こえてくる妻の声に掠れた声で返事をする男性。



彼の愛娘は本日めでたく十歳の誕生日を迎え、家族と娘の友達も交えた誕生会を予定している。


妻からは「早く帰ってね」と、しっかり釘をさされたのだが、そこは下っ端サラリーマンの悲しい性(さが)。

きっちり定時に帰ろうとしたのに、今日中に仕上げてほしいと嫌みな上司から大量の書類を渡され、残業せざるをえなくなったのだ。

死に物狂いで書類を終えた時には、 誕生会が始まる時刻。

そこから娘へのバースデープレゼントをデパートまで買いに行ったことで、更に時間をロスしてしまったのだ。

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