青年はじっとトンネルの一点を見つめていた。
あるのは静寂と、塩の柱と化した女の姿だけ。
歩み寄り、そっと柱に触れながら呟いた。
「また、助けられなかった…」
綺麗な蒼色の瞳から透明な雫が落ちていった。
女越しに少女の姿を捉えた。
「どうして、いつも邪魔をするんだ」
青年の声は震えていて、怒りや悲しみを含んでいた。
「そんなの決まってる。本当の自分をさらけ出しても、周りに受け入れられるわけないじゃない。それならこのまま周りの望む自分でいれば、私達は幸せでしょう?」
少女は外見に反し、とても冷たい声で言った。
「この結果が嫌なら、また勝負する?」
挑発するように少女が言う。
「望むところだ」
今度こそ決着をつける。
だから、もう少し…もう少しだけ待っていて。
君が心から笑えるようにしてみせるから。