言われた通りトンネルを探しているが中々
見つからない。
「…っ!?」
棘で思いっきり足を引っ掻いてしまった。
鮮やかな紅が落ちていく。
生憎、絆創膏や消毒液など持ち合わせていない。
女子力?残念ながら持ち合わせてないよ★
まぁ、切れたもんは仕方ないとして。
結構痛い…
再び歩き出したところで、視界の隅を黒い影が横切った。
「ひっ…!」
何!?人間、の様だったけど…
それにさっきから視線を感じる。
怖い。
心に不安が広がっていく。
しばらく歩いていくとやっと小屋を見つけた。
青年の言う通り、トンネルもあった。
「痛っ…」
やっと帰れると思ったが、歩き続けたせいで足の痛みが今までの比にならない。
入るなと言われたが足の痛みが引く気配もない。
寧ろ増す一方だ。
悩んだ末に少しだけ小屋で休んでいくことにした。
―コンコン。
反応はない。
留守なのだろうか?
気が引けるが「おじゃまします」と一言断って小屋に足を踏み入れた。
その瞬間、息を呑んだ。
目の前に広がる光景は本当に現実なのかと疑う。
そこには人の形をした塩の柱が無造作に置かれていた。
全てを諦めたようなもの。
怒っているもの。
…泣いているもの。
様々な表情をした柱が部屋を満たしていた。
呆然としていると部屋の奥から、
「にゃー」という声がした。
身構えたが、気の抜けた声に安心して目を凝らすと真っ黒の猫がいた。
蒼色の瞳が妖しく見えるのはこの異様な空間のせいかもしれない。
蒼色の瞳、多いな。何だか仲間みたいで嬉しい。
そんなことを考えていると、黒猫が横をすり抜けて外に出ていった。
まるで「ついて来い」というように私が動き出すのを待っている。
不思議に思いながらもついて行くと、向かっていたのはトンネル。
帰り道を案内してくれているようだ。