フワッと頬を掠める冷たい感触を感じ、重い瞼をゆっくりと開けた修二。


その瞬間、「修二!!」という声と共に頬を涙で濡らした母親の顔が間近に迫ってきた。


「母…さん?」


目の前の母親に向かって修二がそう漏らすと、母親はうん、うん…と何度も頷き、更に、良かった。……良かった。と繰り返し口にする。


今、自分が置かれている状況を理解出来ず、ゆっくりと首を動かして周りを見渡すと、真っ白な壁が目に入る。


その事に思わずビクッと肩を揺らすが、次に目に映った光景に、ほっと息を吐き出して安堵した。


白い壁にはちゃんと窓があり、窓の外には夕焼け空と山が見える。どうやらその窓が少し開いており、その部分から冷たい風が部屋へ入ってきているらしい。



あの窓もない真っ白な5角形の部屋じゃない。



そう思うと、修二は自分の胸の辺りの服をギュッと左手で握り締めた。