「解決したからいいってもんじゃないだろう! あんたは、すぐにもめごとを起こし過ぎるんだ! まだずっと傭兵を続けていきたいんだったら、これから気をつけるんだね! でないと、大好きな兄さんの足を引っ張ることになるよ!」
「………」
 ジョルジュはその言葉にうつむき、何も言うことが出来なかった。
 兄のことを言われると反発したくなる気持ちもあったが、そこは兄弟。本当は一番大好きで、何よりも自慢に思い、密かに尊敬もしていた存在。そんな人物の「足を引っ張る」と言われたのだ。こたえない方がおかしいだろう。
「分かったかい? それがよく骨身に滲みるまで……」
 カレンはそう言うと、突然、それまで成り行きを黙って見ていた黒髪の少女の腕を引っ張り、自分より少し背の高い彼女を抱きしめた。
「この子は、お預けだね!」
「姐さん!」
 これには、流石のジョルジュも驚いて顔を上げ、彼女を見たが、カレンは首を横に振った。
「駄目だよ! 触れても駄目だからね!」
「で、でも、そいつが俺と組もうって言ってきたんですよ?」
「馬鹿だね、あんた。この新人の子が、何でわざわざそんなことを言ったと思ってるんだい?」
「え……?」
 訳が分からずに目を白黒させるジョルジュに、カレンは再び溜息をついた。
「あんたとみんなを本当に仲直りさせる為、マルクとの仲も素直にさせる為、だろうが! どうやら、この子のことを子供扱いしたらしいけど、あんたの方がよっぽどお子ちゃまだよ、ジョルジュ!」
 そのカレンの言葉に、ジョルジュは顔を真っ赤にしたかと思うと、その場から走り去り、外に出て行ってしまったのだった。