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「ん・・・・・・?」


両親が仕事で遅くなると言っていた日、眠っていた花音はふと人の気配を感じて目を覚ました。


(お父さん?お母さん?)


帰ってきた両親が何か用があってきたのかと思い、すぐにそうではないことに気付く。

殺気を感じて、身を起こすと、寝ていた位置に剣が突き刺さる。


「・・・嘘っ・・・」


襲ってきた人物の顔を見て、呟く。

此方を光を失った目で見る風夜が、剣を構え直すのを見ても信じられなかった。

「どうして・・・?風夜・・・」

「・・・げろ」


襲ってきたのが彼とは信じたくなくて、茫然と呟いた時、そう声が聞こえて花音ははっと彼を見た。

剣を持つ右手を左手で抑えている風夜の目には、僅かに光が戻っていたが、表情は苦しげに歪められている。


「・・・逃げろ。・・・長くは・・・もたない・・・っ」

「・・・っ・・・」


その言葉に、風夜が自分を逃がそうとしてくれているのだと気付き、花音は部屋を飛び出した。