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七海子は、傷心を癒すべく、自室に閉じこもって、思い出を漁っていた。
 

彼女には、両親に愛された記憶が無い。
 

だけど、愛されていたという証拠ならある。
 

七海子は押し入れの中から、大きくて重たいビニール張りのアルバムを取り出した。
 

開くと、まず一番最初のページに、生まれたばかりの七海子がいた。
 

真っ赤で、顔を歪めて、泣いている。
 

傍らには、疲れ切った――けれども、嬉しそうに笑っている、母親の姿。


立ち会い出産だったのか、何枚か後には父親の姿もあった。


頭に被った不織布のキャップがずれているのも構わず、泣き笑いのような顔をして、七海子を抱いている。