「チックショー!」

夜空に向かって、俺こと金田英次(カナダヒデツグ)は叫んだ。

先ほど、俺は失恋した。

好きな女に振られた。

堺彩花(サカイサヤカ)――彼女は、入社当時から俺がずっと思い続けていた相手だった。

俺は先ほど、その相手に振られた。

――彩花に手を出すな

淡々とした、冷たい声が頭に響いた。

南野淳平(ミナミノジュンペイ)――彼はこの前、課長として赴任してきたばかりの男である。

そして、堺の彼氏だった。

たった短い時間で、どうしてあの2人が結ばれたのかは全くわからない。

「――こっちは長い間片思いしてたんだよ…」

そう呟くも、誰も聞いてはいない。

ずっと見てきた相手だった。

長い間、思い続けてきた相手だった。