恵理が好きな先輩を見つけて
そっちに行っちゃった後、私は
独りで階段をあがっていた。







「はーあ…」





私が関係を持った赤梨 真広は
かなりの大物であることに
あの時してしまったのを
今更になって凄く後悔する。






だって私も誘われただけで
すぐヤる軽い女になってしまうじゃん。







恵理には内緒にしておこう。。









「…うわ!!!」




なんと階段の踊場にあるイスに
座って寝てる赤梨 真広が目の前に。




彼は私の声に目を開けた。






私がそのまま曲がって階段を
上がろうとすると…







「待ってよ」






背後で彼が私を呼び止める
声が聞こえる。





ゆっくり振り返ると彼が
私に手招きしてきた。






その手招きに私は首を振って
拒否する。





そんな私を目を細めながら見て
イスから降りる赤梨 真広は
そのままゆっくり私に近づいてきた。





そんな彼から後ずさる私。





「ちょ、来ないでっ
 あの時やっちゃったの
 凄く後悔してるの」





「彼女がいる男とヤっても
 後悔しないのに?」





彼の鋭い言い返しで後ずさる足が
ピタリと止まる。





…覚えてたんだ。





「も、ほっといてよ。
 あんたに誘われるの待ってる
 女の子沢山いるんだから、そっちに
 いけばいいじゃない!」




そう言っても彼はどこか
違うところを見てる感じで…





「ちょっと!聞いてる!?…んっ!!」






私が怒って声をあげると
赤梨真広が近づいてきて





急に抱きしめてきた。







「な、なに!?離して!!」





でも彼はもっと力を入れて
抱きしめてくる。




彼の突然の行動に混乱してると…







『でね!その後、恋と映画
 行きたいのー!』





「いいじゃん。行こうよ」






彼の体越しに聞こえてくる恋と
その彼女の声に体がピタリと止まる。





心に氷のように冷たくて暗い風が通り
思わず彼の胸に顔をうずめてしまった。





その時、彼は私にぎゅっとまた
抱きしめる力に力を入れてきて
私もそれに答えるかのように
彼の背中に腕をまわす。





恋達が階段をあがって
声が聞こえなくなると、
彼は静かに私を体から離した。







「…ごめん。ありがと」






赤梨 真広は恋達が来るのが
分かってそれを見せないために
私を抱きしめてくれた。





「…べつに」





そう言う彼の横顔は
酷く冷たい顔をしてた。