台風がきていた。

「ひどくならないうちに帰るように」

部長から緊急帰宅を言われたとたん、周りは待っていたと言うように帰り支度を始めた。

「あーっ、やっと帰れる」

「電車大丈夫かな?」

「タクシー混んでるかな?」

周りの声を聞きながら、恭汰も帰り支度を進めた。

チラリと京香の方に視線を向けると、
「もしもし?

これから帰るところ」

スマートフォンで誰かに電話をしていた。

電話の相手は春馬と言う、京香の義弟を名乗った男だろうか?

「ああ、そっちも?

都のお迎えをお願いできる?

わかった、こっちもすぐに帰るから」

そう言った後、京香はスマートフォンを耳から話した。