まだ肌寒い季節の頃、沙羅は高校の入学式に出るために支度をしていた。セーラー服だった中学校時代とは違って、沙羅の行く高校はブレザー。なんだか、少し大人になった気がした。

「ママ、リボンこれでいい?」

形はもう出来ているワンタッチ式のリボンだったが、セーラー服とはなんだか着心地が違った。

「沙羅、もう行く時間よ」

「はーい」

入学式には電車で行く予定だ。

駅までは歩いて10分と言うところ。

駅からは同じブレザーの子が、数人乗った。

結構、同じブレザーの人乗るんだな──

そんな事を思う。

電車に何分か揺られているうちに目的地に着いた。何回か降りたことのある駅なので、何も考えずに降りる。ボーッとしていると、「キャッ!」

人にぶつかりそうになった。

「気を付けろよ」

そいつはそう言ってその場から居なくなった。