「…返事、もらってもいいかな…?」

翌週の昼休み、また男子生徒は慎の席の前に立っていた。

慎は困ったように眉根を寄せ、原の方に目を向けた。

原は、すっと本を上に上げ、顔を隠した。

読んでいた本のカバーには

"同性愛…その時私は…!!"

と書いてあった。

「(うわ…うざい…)

あの…ごめんなさい…

私…好きな人が…いるの…」

内心でそう思いながらも
悲しそうに目を伏せながら言う慎

そんな姿にその場にいた多数の男子生徒が頬を染めた。

「そっか…。咲山さん!その人…誰?」

落ち込み気味だった男子生徒はそう問いかけた。

「えっと…。誰とは言えないけれど…。」

可愛らしくて…と、人物を思い浮かべながら特徴を言っていく慎

心配そうに慎を見つめるこゆきと、目があった。

「とりあえず、その人のことが好きなんだ…」

くすり、と笑った慎。

そんな慎の姿に、男子生徒達はまた頬をあからめた。

「わ、わかった。俺、応援するよ。」

若干、悔しそうにしながら席に戻っていった男子生徒を他の男子生徒が慰めていた。

その様子を見た慎は、ほっと安堵の息を漏らし、また、こゆきを見た。

安心したように、少しだけ頬を赤くそめながら本を読むこゆき

長いまつ毛に、白い肌、栗色の髪が風に乗り、ふわりと揺れる。

長くて細い指先で本のページをめくる。


こんなにも愛らしい彼女から受けた告白の返事を私(俺)はまだ、


返していない。