始発電車が到着するまでの間、風の吹き抜けるホームのベンチに座り、
ユラユラと揺れる地面を眺めていた。
頭の中では、昨日の厚の言葉が、壊れたCDのように、繰り返されていた……。

「付き合ってた女に子供が出来た…」

ホントなのか、嘘なのか、それすらも確かめられなかった。
ただ…
私達の間に、別れが来た事だけは、事実だった…。

「うっ……うっ……」

我慢しようと思っても、涙は勝手に零れてきた…。
厚の言葉を繰り返せば繰り返す程、無性に悲しくてたまらなかった……。

ホームにいるのは、私の他にオバさん一人。
こっちがどんなに泣いてても、構わず知らん顔してくれている。
だから。
遠慮もせずに涙が流せた…。


ホームに入った始発電車に、行くあてもなく乗り込んだ。
人気のない車両は、泣くには絶好の場所だった。

電車が走り始め、車窓の景色が歪んでも、涙のせいにしないで済んだ。
ガタつく電車の揺れは、私にとって都合のいい言い訳だった…。

どこまでも続く線路は、終わりのない悲しみに似ている。
車窓の景色がどんなに変わっても、胸の痛みは変わらなかった…。