ー卒業式

今日で卒業か………
あっという間だったけど、俺にとっては運命さえ変える出会いがあった。


「幸…」


この世界で誰よりも、もちろん俺自身よりも大切で愛している存在に出会えた。


初めは、あの悲しげな、寂しそうな瞳の女の子が気になって近づいた。


いつしか、幸の寂しさを俺が埋めたくて、誰よりも傍で悲しみに寄り添いたくて、愛を見失った彼女に、俺が愛情をあげたいと思っていた。



でも幸は、もらうばかりじゃなくて、俺まで幸せにしちゃったんだけどな
……



自然と上がる口角に気付き、俺はノロケすぎか、と恥ずかしくなった。



「さて、幸を迎えに行かなきゃな!」


クラスのダチへの挨拶で、幸とは別行動していた。
今はおそらく、葉月か七瀬と一緒にいる。


「そんじゃあ!お前ら元気でなー!」


明るく別れを告げると、皆が笑顔を向けてくれる。



「おお!お前も彼女に逃げられんなよー!」

「慰めてやるからなー!」


言いたい放題だな、コイツら!


「うっせ!じゃーな!」


俺はいつものように軽口叩いて教室を出た。
そして大切な人の待つ校門へと向かった。