目を開けると夜だった。焚き火をしていて、炎が暖かかった。
少し視線をずらすと、あの人がいた。
起き上がろうとすると、激痛がはしった。
「ぅ……。」
その声に気付いたのか、
「起きたか。一応布を当ててるけど、大人しくしとけよ。」
「はい……」
体のあちこちが痛い。
一番ひどいのは足だが。
「あの、助けてくれてありがとうございます。」
とお辞儀をした。
「……別に礼を言われなくても」
「なんだよ~。照れくさいやつだな。」
くすっと笑ってしまった。
「なんかおかしいか?」
「はい。二人の会話が面白くて。」
すると、目を見開いた。
「おまえ、わんこの声聞こえるのか?」
「え……はい。」
なんだろう。
「わんこの声はふつうの奴には聞こえないんだ。」
え……。
「おまえ、なんか前にもそんなことあったのか?」
少し考え込んだ。
「私…、前のこと覚えてないんです。」
「ぇ…」
「気づいたら檻の中で、人に売られていました。分かってるのは、私がどこかのお姫様だってことだけ。」
「……。」
「なんの価値があるかは分かりません。ただ、かなり高額でないと買えないとか。」
「ひどいよ。買うとか。」
わんこが言った。
「名も分からないのか?」
「はい……」
「………。」
しばらく沈黙が続いた。
「ユア。」
「え……」
「今日からお前の名はユアだ。」
「どうやって決めたの?」
「なんとなくだよ。ユリのイメージで、なんかこう…ちょっといじって、ユア……」
自分の名前……。
「気に入らなかったら言ってくれ。」
「あ、いえ!とんでもございません!名前付けてもらって、嬉しいです。」
自然と笑顔がこぼれる。
「そうか。」
「…あの、旅をしてるんですか?」
「ああ。」
「私も同行させていただけませんか?」