数日後、ようやく京の町に着いた。

 そこは多くの人でにぎわっていた。売ろうと必死に声を張り上げる人、周囲の人と楽しそうにしゃべる人、元気に走りまわっている子どもたち。

 ここはいつでも穏やかだな。

 そんなことを思いながら目的地に向かった。

「ここか……」

 町を少し歩いて、『前川邸』と書かれた看板のある大きな建物へと着いた。

 新撰組の屯所ってこんなに大きいのか。……意外だな。

 もう一度看板を確認して門を潜ろうとしたとき、首に金属のような冷たいものが触れていることに気づいた。

 まさか、さっきから後ろに……? 殺気がびしびし伝わってくるし、少しでも動いたら即首をはねられるな。ここで目立つ必要もないし、おとなしくしておくか。

「あなた、何者ですか?」

 その質問はいろいろな意味で困るな……。

「新撰組に入隊したいと思っているのですが……」

 あー。後ろをとられるなんて油断しすぎだ……。もっと警戒しろよ。

「そうですか」

 そう言うと男は首から刀を退かした。

ゆっくりと、今度は警戒しながら後ろに振り返り、刀の主を見た。もちろん手はいつでも物を抜けるようにしながら――。

 刀の主は暗めの茶色のやわらかそうな髪と浅緑の瞳を持つ美丈夫だった。

 こいつ……強い。

 今までの経験からなのか、私はふとそう思った。

「ついてきてください」

 そう言いながら、彼はすっと刀を収めた。

 ……あの手つき、相当な手練れだな。さっきも油断していたとはいえ、気配に気づけなかった。

 そんなことを思いながら私も少し警戒を緩め、緊張の糸を解いた。

「ここで待っていてください」

 それだけ言って彼はどこかに行ってしまった。

 上の人間を呼びにいったのか。