「_何も__こいつは…」


ん…。


身体が重い。


騒がしい声にあたしは瞼をそっと開く。


そこから見えたのは数人の大きい背中。


あぁ、攫われたんだ。


そう気付くのに、あまり時間はかからなかった。


ぼーと靄がかかったようにうまく頭を働かせることが出来ない。


起き上がろうと、力を入れたさい、頭に鋭い痛みが走った。


「〜っ…」


ガンガンとバットで叩かれたような痛み。


「…やっと起きたか」


数人の中のある1人があたしに気付き、ニタリと口角を上げた。


この人だ。


あたしを襲ったのこの人だ。


意識を失う際、最後にみた不気味に笑う男を思い出し、思わず身を震わせてしまう。


情けなく、ガクガクと震える身体を守るようにあたしは自分を抱きしめる。


「あれ?震えてんだけど、可愛いね。残念だよ」


男は見下ろすように見るのはやめ、あたしと目線を合わせるように、腰を下ろした。