その朝も、私は広いオフィスにあるデスクに座り、朝から届くメールのチェックに余念が無い。

 朝礼は課長の私に代わり、課長補佐である橋本に任せる。
 割り箸に眼鏡を掛けさせたようなシルエットの、見た目は頼りない男だ。
 しかし、年齢は三十四歳で年上なだけはあって仕事ぶりは真面目で評価できる男だ。

 自分が朝礼を実施する手間が惜しいほどに、私の下には仕事が集中してくる。
 営業部第二課、総勢で二十名ほどの部下。
 それを統率するのが私の仕事だ。
 無論、自分が直接交渉の場に出向くこともあるし、人を管理するよりも現場に出るほうが自分としても好きだ。

 しかし、好みと実務は別のもの。
 私は、自分の受け持つ仕事をしなければいけない。
 まずは朝のメールチェックである。