「湖柚っ!人の話聞けっ!!」


後ろから村星君の切羽詰まった様な声がこちらに向かって飛んで来るが、返事をする余裕なんか無い。


今までこんなにも必死に走った事は無いという位全力で走っている私の頭の中には、先程後藤田君が発した言葉がグルグルと回っていた。


『にしても本当、お前等よくケンカすんよな……婚約者同士なのに、凄まじいわ』


「婚約者って……何………!?」


今日私は、普通に己園と七智と帰ろうと廊下を歩いていた。


そんな時、男女が怒鳴り合う声が私達3人の耳に届く。


『この声……村星君と所さんじゃない?』