4月10日…

0時ぴったりにメールをくれていたのは、あさみと紘だった。

今日までの約二ヶ月間、この二人には沢山の迷惑をかけた。
これからももっと、かけてしまうかもしれないけれど。

だから、私が元気でいることを伝えるために明るい文章を打った。

新年度が始まってさらに忙しく、なかなか会えない中で決定した報告も入れて。


少しは安心してくれるのかな、と思うと自然に頬が綻んだ。





───あの日、彼に婚約破棄された日からもう二ヶ月も経つ。

長いようで、短かった。
それはやっぱり、二人が居てくれたからだった。


本当に久しぶりに再会して、一か月も経っていなかった頃だったのに、
全てを紘に話すことができたのはなんだか不思議だったけど、

理解して私を励まそうとしてくれた紘がそこにはいたから、良かったと思ってる。


あさみと同じような存在がもう一人できて嬉しかった。



私は、自分のことを強くて自立した女だと思ってた。
だけど、それは全然違うってことを知った。

たった一人の男を、彼を思って何日も泣いて、泣いて。
残された婚約指輪と、連絡先にすがって。

あんなにも悲しい気持ちになったのも初めてだったし、
あんなに涙が出たのも初めてだった。


お母さんが死んだときも、

高校を卒業するときも、

大学に受かったときも、

あんなには泣かなかった。


そんなにも彼のことが好きだったのかと思い知らされた分、

私と彼を繋いでいたものはとても弱かったと思い知った。



決して、お父さんのせいじゃない…

そう教えてくれたのは、二人だったし、さらに強く恨んだ私を叱ってくれたのも二人だった。


そう……少しだけだけど、強くなれた気がするのは、二人のおかげなんだよ。


ありがとう、本当にありがとう……




『ありがとう。もう26歳になっちゃった。

少し報告が遅くなったけど、今年度から副主任に昇格しました。

これも二人のおかげです、ありがとう。

これからは仕事に力を入れて頑張ろうと思う。

こんな私だけど、今年も仲良くしてやってね』



26歳の春は、素敵な春になりそうだった。