まだ薄暗く人気のないその場所はどこか不思議な雰囲気を纏っている。入り口のすぐ横にある大きな木は朝日がのぼることを今か今かと待っているようだ。
「ここが、新選組のいた場所…」
ぽつりと呟いた私の言葉は静寂に満ちたそこによく響いた。
昼間だと観光客や語り部の方がいるからどうも落ち着いて見られない。ホテルを朝早くに出て借りていたレンタカーを最寄りの駐車場まで走らせた。案の定人はいなくてこの時だけは独り占めだ。
赤い布に金で縫われた誠の文字は風に少しだけ揺れていて、まるでここまで来いと誘っているようだ。石畳の上をゆっくりと歩き、それに触れるとひときわ大きな風が吹いた。
「っ…」
朝日がのぼりはじめたのか眩しくて目を瞑った。
足元が揺れた気がしてふらりとよろけて膝をつく。








それが長い長い私の一日の始まりだった。