ついにこの日が来た。
(征常高校 新入生代表首席
十世畑 つぐみ。)
こうやって呼ばれる事が私にとっての長年の
夢だった。私は特に頭が良いという訳ではない。中学1年までは中の下レベルだったのだ。そんな私が首席を目指そうと思ったきっかけは私の将来の夢にそった結果だ。
征常高校、通称“セイコー”は進学率が高く、歴史も古い。セイコーの数ある美点の中から私が注目したのは「学生才能向上選抜外国留学」だ。なんだか長い名前だが、これを目的としてこの高校を志望する学生も多い。
「外国留学…。」
私もその一人だ。私は実家が経営するスイーツ店の娘で、物心ついたときからスイーツを食べたり、作ったりしていた。
そんな環境の中で育った私は両親を超えるパティシエになりたいとセイコーの外 国留学でスイーツの技術を学びたく、ずいぶん頑張った。
(思えば長…。)
「…ぐみ、つぐみ!立ってつぐみ!」
「へ?」
名前を呼ばれて振り返ると妙に焦った親友の姿があった。ふんわりショートボブの栗色の髪、色白の肌に一際目立つ大きな瞳。私の唯一無二にして最高の親友、雪森 愛菜香だ。
「まなか、可愛い~。セイコーデビューだね!」
「何言ってるの?今、先生に呼ばれたの聞いてなかったの?」
(先生に呼ばれ…?)
司会の方向を見ると、面長の50代位の女性教師が私を見つめていた。しびれを切らしたというように耳に響くほどの大きな声で私の名を呼んだ。
「生徒代表“首席”十世畑 つぐみ!!
返事をして登壇しなさい!」
「はっはい!!!」
私と同じ新入生のみんなが緊張した面持ちでこちらをじっと見つめていた。笑っていいのか、黙っていたらいいのか混迷に渦巻く顔をしている。この場合どちらにせよ、私にとっては羞恥でしかない。
(は…っ、恥ずかしい。)
恥ずかしすぎて自分がどんな歩き方をしているかさえわからなかった。
(見てないけど、みんなの視線が突き刺さ る~っ…。)
ガタンッッ!!!
『!?』
体育館にいる人全員が一斉に音のした方を見た。無論私も注目した。
(誰だろー?椅子から落ちたみたい。…うわー、私より恥ずかしいかも。)
一番後ろの列に並んだ三年男子らしかった。ステージに立っている私からは顔が見えなかったけど、彼は平然と椅子を直し、何事もなかったように座り直した。みんなが唖然と彼を見つめていたけど、彼は人の目など気にせず眠り始めた。
(…すごい人だな…。全然人の目を気にしないで超然としてる。)
みんなの注目は既に彼の方にあり、私の失敗をもう気にする人はいなかった。
(ちょっと助かったかも…。)
心の中で密かに感謝しながら、私は発表を始めた。
(征常高校 新入生代表首席
十世畑 つぐみ。)
こうやって呼ばれる事が私にとっての長年の
夢だった。私は特に頭が良いという訳ではない。中学1年までは中の下レベルだったのだ。そんな私が首席を目指そうと思ったきっかけは私の将来の夢にそった結果だ。
征常高校、通称“セイコー”は進学率が高く、歴史も古い。セイコーの数ある美点の中から私が注目したのは「学生才能向上選抜外国留学」だ。なんだか長い名前だが、これを目的としてこの高校を志望する学生も多い。
「外国留学…。」
私もその一人だ。私は実家が経営するスイーツ店の娘で、物心ついたときからスイーツを食べたり、作ったりしていた。
そんな環境の中で育った私は両親を超えるパティシエになりたいとセイコーの外 国留学でスイーツの技術を学びたく、ずいぶん頑張った。
(思えば長…。)
「…ぐみ、つぐみ!立ってつぐみ!」
「へ?」
名前を呼ばれて振り返ると妙に焦った親友の姿があった。ふんわりショートボブの栗色の髪、色白の肌に一際目立つ大きな瞳。私の唯一無二にして最高の親友、雪森 愛菜香だ。
「まなか、可愛い~。セイコーデビューだね!」
「何言ってるの?今、先生に呼ばれたの聞いてなかったの?」
(先生に呼ばれ…?)
司会の方向を見ると、面長の50代位の女性教師が私を見つめていた。しびれを切らしたというように耳に響くほどの大きな声で私の名を呼んだ。
「生徒代表“首席”十世畑 つぐみ!!
返事をして登壇しなさい!」
「はっはい!!!」
私と同じ新入生のみんなが緊張した面持ちでこちらをじっと見つめていた。笑っていいのか、黙っていたらいいのか混迷に渦巻く顔をしている。この場合どちらにせよ、私にとっては羞恥でしかない。
(は…っ、恥ずかしい。)
恥ずかしすぎて自分がどんな歩き方をしているかさえわからなかった。
(見てないけど、みんなの視線が突き刺さ る~っ…。)
ガタンッッ!!!
『!?』
体育館にいる人全員が一斉に音のした方を見た。無論私も注目した。
(誰だろー?椅子から落ちたみたい。…うわー、私より恥ずかしいかも。)
一番後ろの列に並んだ三年男子らしかった。ステージに立っている私からは顔が見えなかったけど、彼は平然と椅子を直し、何事もなかったように座り直した。みんなが唖然と彼を見つめていたけど、彼は人の目など気にせず眠り始めた。
(…すごい人だな…。全然人の目を気にしないで超然としてる。)
みんなの注目は既に彼の方にあり、私の失敗をもう気にする人はいなかった。
(ちょっと助かったかも…。)
心の中で密かに感謝しながら、私は発表を始めた。