「これ、伊織くんに届けてくれる?」

母に渡されたのは祖母から送られてきたモモだった。

私 滝沢 千幸(たきざわ ちゆき)16歳高校2年生である。

伊織くんとは私が小学校の時高校生だった近所の人で、よく遊んでもらったのを覚えている。

たしか私と8歳差だから今は24歳のはず…。社会人か…。

「あれ? 伊織くん今一人暮らしだよね? どこいるの?」

「はい、地図」

お母さんや、準備いいね。

私は地図とモモを持って外に出る。

そろそろ日が沈み、暗くなる時間帯。こういう時間は夕日がとてもきれいだ。

うん。今日も快晴。夕日がきれいに見えるから明日も快晴だろうか。晴れの日はすがすがしい気持ちになるので好きだ。


地図に示された場所は我が家から結構近く、意外とすぐについた。

どうやらマンションに住んでいるらしい伊織くん。私はそのマンションのエントランスに入り、インターホンを押す。

そういや、伊織君が大学行ってから全然あってないや。私のことわかるかな。