制服を羽織りネクタイを整えたあたしは、鏡に映る自分の姿をじっと見つめる。






 玲汰先生が仕事をしている姿を見たあの日から、もう一週間が経った。

 あの時感じた訳の分からない感情に、あたしは未だに縛りつけられていた。


 もうずっと玲汰先生の家に通っているし、合鍵で勝手に家に入ってるのに、あの日から何故だか、玲汰先生を直視することが出来ないんだ。



「よしっ」


 そしてあの日から、変わったことがもう一つ。


 あたしはオシャレをするようになってしまった。

 いや、そりゃあそこそこオシャレはしていた。


 だけど、昔からそこまで自分を〝着飾る〟という行為に興味がなかった。

 というよりも逆にそういうのに抵抗があったのだ。


 そんなあたしが、メイクをするようになって。

 いつもより髪を結ぐ時間が長くなって。

 鏡だって、埃を被っていたはずだったのに。





 ただいつも頭の中にあるのは、玲汰先生のことだけ。


 可笑しい。

 完っ全にあたしは壊れてしまっている。




 今日も5分くらい鏡を眺めた後、あたしは鞄を手に持った。

 そして、机の上に置いてあるキーケースをもう片方の手で取る。


「あっ……」

 だけどキーケースはさらりとあたしの手から抜け出して、落ちてしまった。




「もう……」