「優」




「アンタのことが好きなんだ」









触れるか触れないかの距離








「どうしようもないくらい好き」










「アンタになら殺されてもいい、だから、優が欲しい」









「全部欲しい」












黒野は受け入れてくれた









私の醜い全部













幸せじゃなくなってもいいから、と彼は私の涙拭った












呪われたままで始めてしまったから










私は、怯えていた













「ん....優」







寝ぼけたまま、私を抱き寄せる









「優…....」













黒野は初めての私に合わせて、うんと優しくしてくれた










そのおかげか痛くなかった、むしろ気持ち良くてどうにかなりそうだった










ずっと一緒にいて









学校でもキスしたりして












帰れば黒野の部屋にずっといた













そしたら黒野は










「もう住めばいいよ、てか住んで」












「どこにも行かないで」










黒野の言葉はいつもストレートだ











どうしても照れてしまう












「べ、勉強教えてあげる」














私は視線をそらすけど、黒野はいつも愛おしそうに目を細めて笑ってる











ある日、黒野が怪我をして帰ってきた









誰にやられたって聞くけど、大丈夫だの一点張り










多分私へのあてつけか何かでだと思う












いつもあの言葉を忘れた時に、不幸は訪れて











現実に引き戻される











だめだ、幸せになっちゃいけない












黒野から、離れようともした











けど黒野は何もかも受け入れて離そうとはしなかった










「俺の不幸は優がいなくなっちゃうことだから、俺から離れていかないで」









「でもっ」









「俺はただ優が幸せだったらそれでいい」










黒野は私を責めることなんてなかったし、怒ることもなかった











お揃いのピアスを開けた











白いピアス










私は左耳に、黒野は右耳に











黒野は私のこと、私よりもわかってて











「失うのが怖い」と泣く私にキスをした











「優は頭がいいから、俺のこと忘れる筈ないよ」












まるで、遺言みたいだった












「優…........心中しようか」











間違えた、








「…うん」

















わたし達は、毒を飲んで












抱き締めあって、眠った













鳥の声が聞こえて、昨日まで雨がまるで嘘みたいに晴れて












冷たくなった黒野の身体に抱かれて目が覚めた













未必の故意だ










殺人に入る













警察からは、さすが殺人快楽者だと言われた











黒野は、笑いながら死んだ










机の上に、写真が置いてあった











私と黒野が映った写真だ














財布に入れていつもお互いに持ち歩いていた













ビリビリに破いてしまった後に気がついた











裏に何か書いてあったのを












あわててテープでつなぐ












「優の幸せが、俺の最後の願いです。相手が誰であろうと優が笑っていられればいい。それだけが、俺の幸せです。 黒野 圭」













涙が止まらなかった













こんなにも愛しい彼のために










私は幸せにならなくちゃいけない












彼の最初で最後の願いを叶えるために