翌日、直哉がリビングに降りていくと朝ごはんと置き手紙があった。

直くんへ
 朝ごはんを作って置きます。お母さんは、出かけますが食べて下さい。昨日のこと、直くんが夜遅くなっても帰って来なかったとき体じゅう震えが止まりませんでした。帰ってきたとき力が抜けて。あまり先生の言葉も覚えていません。たぶん今日も出かけるでしょ?お願いだから連絡は必ず下さい。先生が一緒にいてくれているならお母さん安心してあなたを待っていられるから。あと「お帰り」って言える幸せが凄く分かった気がします。ありがとう。

              母

最後“ありがとう”の文字を見たとき直哉の目から涙が溢れてきた。不本意だった。母と言い合ったとき泣くことなんて一度もなかった。ただただイライラして物にあたっていた。

「なに感謝してんだよ。お前のお荷物なんだよ。俺は。イラナイんじゃなかったのかよ。」

直哉は、一時の間ごはんに手がつけられなかった。

ごはんを食べ終わり出かける準備をしているとケータイがなった。メールだった。

“報告会、始まるぞ!早く来い。”

東雲からだった。急いで家をでた。なんだかんだあって自転車は一ノ瀬の所だった。タクシーを捕まえて一ノ瀬宅へ向かった。

会議はすでに始まっていた。席に着くと若芽がお茶を出してくれた。すると東雲が

「水柿、お前昨日例の謎の青年に会ったって本当か?」

と身を乗り出してきた。

「…ああ。」

直哉は、お茶をを一口ふくんだ。すると一ノ瀬も

「あの後何が起きたか私も聞いていない。」

とこちらに視線を向けた。

直哉は、大きく深呼吸しそして話出した。

「あの後、青年を追いかけて路地を走り回りました。彼は、土地勘があるようでどんどん差をひらかれました。そして大通りを横切ろうとしたとき幼女が飛び出してきて。彼は、転倒しました。僕は、彼を起こそうと手を握りました。その時、違和感を感じたんです。でもその時は何か分かりませんでした。揉み合っていると彼のネックレスが切れて。それに気を取られた空きに逃げられました。すいません。」

直哉が、言い終わると東雲はうなだれ若芽も肩を落としていた。だが一ノ瀬だけは余裕の表情を浮かべていた。

「でも、違和感には今は気づいているんじゃないか?“その時は”分からなかったんだろ?」