朝目覚めると、隣に翔の姿はなかった。

シーツに微かな温もりを残して、どこかへ行ってしまった翔。



「…翔…?」



もちろん部屋にいないことはわかっているのだけれど、

それでも、存在を確かめるように、名前を呼ぶ。


体から布団をはがして、まだ完全には動いていない頭を一生懸命に回転させると、

目に飛び込んできたのは眩しい太陽の光だった。


「まぶし…」



思わずこぼれたのは、小さなため息と独り言。


…──きっと、これがあたしにとって"最後"の朝日なんだなぁ、としみじみ思う。



「美音?」



ガチャ。という、部屋の扉を開ける音とともに、翔があたしを呼ぶ声が耳に届いた。


起きたばかりなのか、翔はまだスウェット姿だ。

このスウェットは、お母さんが昨日の夜、こっそりお父さんの洋服だんすから持ち出したもの。


いつもはお父さんが着ているスウェットを翔が着ているのは、なんだか少し変な感じ。