どれくらい時間が経ったのかな。


頭の奥の方で、ドアが開く音が聞こえた。

足音は少しずつ大きくなっている。

どうやらこっちに向かってきているみたい。

それを理解したあたしの頭が覚醒した瞬間、あんなに固く施錠されていたこの部屋の扉が勢いよく開いた。


「ファビウス、喜べ!! やはり君が思っていたとおりだった。奴らは孤児院が雇ったんだ!!」


聞き慣れないバリトンでけたたましい大声を放つ男は、寝巻き姿でベッドに寝そべっているあたしを視界に入れたあと、はた、と止まった。



まるで見てはいけないものでも見たような、そんな雰囲気だ。

けっして大柄とは言えない長身の男は、ファビウスと同じくらいの年齢だろう。

彼の容姿は、ゆるく波打つ黒髪が印象的で、やっぱり目鼻立ちが整っているハンサムな人だ。


「ねぇ、さっきの話。どういうこと?」

「い、いや……はは……ファビウスくんはどこかな?」