……遠くから子供の声がする。


息を殺して、その声が過ぎ去るのを祈るようにして私……三森 鈴は胸の前で両手をギュッと合わせた。

恐怖に体が勝手に震え、歯がカチカチと音を立てる。



私の隠れている理科室の扉が開く音に短く「ひっ」と情けない声が漏れる。


慌てて両手で口を抑え、息を殺すがヒタヒタと裸足で床を歩く音が理科室にゆっくりと響く。




ゆっくり……ゆっくり……


まるで私がこの緊張感に耐えきれず、飛び出してくるのを狙うかのように……。



ひたり……ひたり……


足音がゆっくり……ゆっくり……理科室の中を徘徊する。



「……かくれんぼしましょ〜 」



小さく歌う声にビクリと肩が跳ねる。



いや…………いや……っ……

私は……私はまだ死にたくない……っ……!!




「かくれんぼ……かくれんぼ……鈴ちゃん……」




やめて……やめてやめてやめてやめてやめて……!!




(お願いだから…………もう許して……っ……!!)




叫ぶように心の中でそう唱えた時。

理科室の中から人の気配が消えた。




……、……諦めた……のだろうか?


5分……10分……と時間が経ち、私はホッと安心して身を潜めていた掃除用のロッカーから出た時だった。






肩にポンッと冷たい手が置かれた。




「……あ……ぁ…ぁ………」





壊れたオモチャの様にぎこちなく回した首……。



見てはいけないと伝令する脳に欺くように……





振り向いた先にいたのは…………。







「鈴ちゃん、みつけた……」







そう言って心底楽しそうに笑う……











私が……私達が殺した……













《あの子》が立っていた。