―――――「おーい、綾乃」

 「ん…」

 何か、前から誰かの声がする。

 低いような高いような男子の声…。

 ん~、でも何も要件がなさそうだから寝よっと。

 グリンと、顔を反対の方に回して眠りにつこうとした時……

 「カシャッ」

 と、音がした。

 ん?携帯のシャッター音?
 恐る恐る、腕の中から目を開けると、一人の男子が携帯画面を見ながら、
笑っていた…。

 「~~~翼っっっ!」

 犯人は、大宮 翼 (おおみや つばさ)、クラスメイトの男子。

 「お前の寝顔、おもしれぇ……」

 「寝顔~~?!」

 「お前、覚えてないの?
 3時間目の授業爆睡してたじゃん。前の時間が、体育だったからとはいえ…」

 そう言うと、翼はある画面を私に見せた。

 その画面に映ってるのは、一人のよだれを垂らし寝ている少女…

 つまり、私。

 「やめてよぉぉ!!!!!!」

 こんなにだらしない私の写真を誰かに見られたら…っ、

     私の人生終わっちゃう~~~~っ!



 「これは、永久保存だわ」

 ピッという音と、翼の笑いながら喋る声が聞こえた。

 「……………早く消してっ!翼ぁ~っ!」

 「追いつけるもんなら消してみな~」

 お前は、おっちょこちょいのチーターか!

 そう言うと、翼はスタコラサーっと廊下に消えて行った。

 「待てぇぇ!!」

 翼について行くように私は、走って追いかけた。