淹れたての珈琲を二つ手にしてリビングへ戻る。暖かい室内でもゆらゆらとカップから湯気が白く立ち昇る。


佐久間と距離をとるつもりでは無いけれど、私は彼の言葉を真っ直ぐに聞かなければいけない気がして…小さなソファーの前のテーブルを挟んで向かいに座る。


「ありがとう…」


珈琲カップにゆっくりと手を添えて佐久間は笑みを浮かべる。弄ぶみたいにカップの温かさを手のひらで確認していた。


「聞いてくれるかな…」


ゆっくりと息を吐き出しながら佐久間の視線が私に向けられた。


「貴方が話したいのなら。――でも、無理に話さなくて良いのよ?」


「うん…そうだね」


彼はまだ迷っている風に見えた…