「いらっしゃいませぇー」



「お嬢さん、こっちも頼むよ」
「はーい、まいどおおきに!」

「お茶もらえるか?」
「少々お待ちください」




ここは京の一角にある三津屋(ミツヤ) 食事処である
江戸時代幕末
黒くて大きな異国船が浦賀にやって来て早数年が経ち、大きな動乱の渦に飲み込まれそうな中、いつもと変わらず穏やかな時間を奏でる食事処があった


「あ、いらっしゃい!久米(クメ)さん 二人入りまーす」


「こんちわ、小夜ちゃん今日も元気やねぇ」
「ほんまに、看板娘なだけあるわ」


にこにこと笑顔を振りまいて接客をする娘、仲上 小夜(ナカガミサヨ)

「久米さん、味噌汁定食二膳入ります」
「はいな、小夜ちゃんがいてくれて助かるわ。うちだけやと店が持たんさけ」

「いえいえ、大丈夫です。まだまだ働けますよぉ」


ふんっ と袖をまくり元気に八重歯を見せて笑う彼女に、久米と呼ばれた五十代の女性はこの三津屋の女将、つまり女主人だった


今日も久米さんと二人で店を切り盛り
大変だけど、とても楽しい








今は……