うわあ。昨日の比じゃないくらい視線が痛いよ。

「おはようございまーす」

 そろりと教室に入ると、音が消え一斉に視線が集まる。

 いたたまれずに席に向かうと、机に上にゴミ箱の中身が散乱していた。

「やだ、汚ーい」

 クスクスと笑い声に包まれる。

「円、いる?」

 教室に紫苑がやってきた。

「嘘。紫苑様よ!」

 一気に教室が賑やかになる。

「円、ちょっとおいで」

 紫苑が手招きをする。

 教室を出るとき、女子の視線に殺されるかと思った。

「どうしたの、紫苑」

 階段の踊場に連れてこられた。

「どうしたの、は円の方でしょ。イジメられてるんだって? 麻美に聞いたよ。麻美には余計なことするなって言われたけど心配で」

 紫苑、ありがたいんだけど心配事が増えちゃったよ。

「大丈夫。会長さんが早急に対処するって言ってたし」

「へえ。あの人がね」

「うん。それにイジメなんておばさん達に比べたらカワイイものだし、今は紫苑も麻美もいるしね」

 私が笑うと、紫苑は辛そうな顔をして私の頭を撫でた。

「無理はしないこと。いいね」

 紫苑が言ったとき、会長さんが階段を降りてきた。

「あ。会長さん、おはようございます!」

 挨拶をしたが、会長さんは私の頭を凝視して、怖い顔をして行ってしまった。

「今日は機嫌が悪いのかなあ」

 紫苑は私の頭に乗せていた手を見て、なるほどね、と呟いた。