木で造られた朱色の門に、大きな鯉の泳ぐ池。
松の木に石畳、古くて大きな母屋。
離れからは紅葉が見えていたっけ。
幼い頃の、まだ何も知らなかった幸せを無垢に信じていた幼少期。
自分の家がなんなのかすらも理解していなかった。
古傷だらけの男たちに囲まれて、それでも他の家もそうなもんだろうと、疑問すら浮かばなかった。
今思えば、馬鹿過ぎて、滑稽過ぎる子供だったと言える。