久しぶりに夢を見ることなく、眠っていたように思う。

沈んでいた意識が、徐々に目覚めてくるのをゆのは感じていた。


「・・・ここは・・・?」


まだしっかりとは見えない目で、周りを見渡す。

白い、とゆのは感じた。
なにか白いものに覆われたところにいるようだ。

次に、身体に冷たいシーツのような感触を感じる。
それと、なにかあたたかいものに抱かれているようなこの感じは、一体ーーー?


「きゃあああっ!」


ぼんやりとしていた意識まで覚醒した。


「は、離してっ」


あたたかいものの正体は、自分を抱えていた、たくましい2本の腕。

その先には、燃えるような赤い髪をした、見知らぬ男がいた。

しかもここは、ベッドの上!


手足をバタバタと動かし、なんとか逃れようとするゆのを見て、赤い髪の男が持つチョコレート色の瞳が驚きを滲ませた。


「起きたのか? 起きて早々、暴れるな。お前は丸一日寝ていたんだぞ」


暴れる少女を優しく押さえながらそう言った。


「あっ、暴れないからっ! 離してっ!」


なおもたくましい腕から逃れようと、少女は抵抗を続ける。


「名を教えろ」

「え?」


顔を上げて男を見たとき、少女の瞳は、チョコレート色の瞳以外のものをしっかり捉えた。


「・・・リンゴ・・・」

「リンゴ、という名なのか?」


少女の目は、男の髪をじっと見つめている。


「貴方の髪、真っ赤に熟れた、リンゴみたいね・・・」


そっと左手を伸ばして、髪に触れる。

少し長めで、毛先が遊ぶように流れている男の髪は、真っ赤だった。

少女はそのまま指を通して、梳いてみる。


「綺麗・・・」


薄暗い部屋でもこれだけ綺麗なのだから、太陽の下で見たらどれほど美しいだろう・・・?

思わずそう考えずにはいられないほどだった。


しばらくしてハッとした顔をした少女は、慌てて手を離した。

男は呆気にとられた顔をしている。