目を開くと私は、オレンジ色に染まった教室に立っていた。


私は、他には目もくれずある一点を見つめる。


すると教えられた通り、窓側の一番後ろの席で顔を机に伏せて寝ている男子生徒を見つけた。


放課後の教室に残っているのは彼しかいない。


何故ならこの時間帯の教室は私が言うのは可笑しい話だけど、…曰く付きだから。



私は、靴音を立てないように彼に近づいた。
胸の鼓動さえも殺すように、そっと。


だって、こんなチャンスはもう二度とない。




やっとの思いで彼の机の前に立つ。



私に気づかないまま寝息をたてて寝ている彼がとてつもなく愛おしくて、懐かしささえ感じて、自然と涙が頬を伝った。



サラサラの茶色がかった髪の毛は、あの頃と変わっていない。



時間が止まってしまったのは私だけなのに、


何の変化も感じられない彼を見ていると、ひょっとしたら私も…と、ありもしない錯覚を覚えてしまった。