ようこそゲストさん
「黒宮くーん!このチョコ、頑張って作ったんだ!もらって、くれる?」
「私のチョコも、食べて!」
「私も!」
私が恋してしまった黒宮くんは、ものすごくモテる。根暗な私に立ち入る隙などない。
(とか言って持ってきちゃってる私って…。もう放課後。渡せない。そうだよ。)
言い聞かせても、思いは消えない。思わずため息を吐く。
「何してんの?」
「く、黒宮くん…」
そんなとき、声をかけられた。周りには誰もいない。
(チャンスじゃ…義理だって言えば…)
「これ、チョコ。義理だけど、あげます。」
「なんで敬語?ってか、マジ?」
ぽかんと私の手の袋を見つめる。その意味がわからずぎこちなく頷くと、袋が受け取られた。
「ありがと。」
そう言って立ち去っていく。
…嬉しいって聞こえたのも、頰が赤かったように見えたのも気のせいだろう。
ハッピーエンドじゃない。だけど、ビターエンドはまだ来ていない。