「死者の霊を鎮めるものじゃよ」

 不思議そうに眺めているアレサに答える。

 この集落では、死者の霊を弔うのに人形(ひとがた)が用いられる。

 彼らの伝承では死者は死んだのち、しばらく現世に留まる。

 そのあいだに大切な者の不運を払う。

 それから百日後に天国に向かい、そこで魂の秤に掛けられて行き先が決まるとされている。

 そのまま天で暮らすか、再び現世に生まれ変わるか、地獄に墜とされるか。

 そのなかでも細かく道は分かれているが、大体はそういったところだ。

「確か、魂を秤(はかり)に掛ける神がおったな」

「良識の神メジャナウ。溢れた水の量で魂の行き先を決める水先案内人だ」

 魂の乗る土台の下には水があり、乗って溢れた水の量で魂の重さが決められる。

 彼らは火葬でも埋葬でもなく、そのまま放置され自然に還っていく。

 いわゆる風葬というものだ。