アリア~詠唱歌~(後編)
ムシカの里、平時よりユタカの奉仕していた教会にて。
「・・・・そんな、フランシス様(大友宗蘭)がそんなことをなさっていただなんて、信じられません。(マンショ)」
「悔しいです・・・・・・!(マンショ)」
「え、フランシス様がどうなさったの?(女の子)」
「そうらんさまは王様だよ!(子供たち)」
「意外・・・。あんなだから、大友ってもっと野蛮で女好きなヤツかと思っていたわ。(サクヤ)」
「皮肉だよな。最初はそんな思いでいたのに・・・。(シマコ)」
ローマではキリシタンたちの(王)とまで呼ばれていた大友宗蘭。シマコに助けられた二人の少年(伊堂マンショとミゲル)たちは、教会に戻っていたサクヤとユタカの前で自らが信じたかつて理想郷をムシカに建国しようとした、(彼らの王)であった宗蘭の姿を打ち明けた。
「本当は、私たちは眼を背けていたのかもしれません。(ミゲル)」
「言われてみれば、確かに我が将軍は近ごろ人が変わったようであると、教会の者も言っていた。・・・あの方の苛烈な面は知っていますが、時折お見せになる優しい顔も私は見ています。(ミゲル)」
「だが・・・私たちは信仰を棄てるなどできません。ここの子らも、ここに住まう者らも中には戦で住む場所のない貧者は大勢います!奴隷になろうと、口べらしのため我が子を売る親が一番の悪ではありませんか!(マンショ)」
二人の少年キリシタンたちの苦悩する顔、絶望に満ちた表情に、サクヤは同情の念を寄せた。
「でも、大友家をあのままのさばらせては。理由がどうあれ神を建前に戦をするのが正しいはずはありません。子供たちも悪魔にまたいつ襲われるか。(サクヤ)」
「・・・あなたたちが絡んでいるとなればなおさら、私たちが黙っているわけにはいかない。(サクヤ)」
※マンショを輩出した伊堂家も島津家と別に都万宮神社(※モデル=都万神社)によく参っていた。
「ですが戦は領地を拡げるには仕方のないことで・・・これも我が主のお導き・・・(マンショ)」
「・・・ッお黙り!!他人様の命をぶっ殺しといて、屁理屈こねんじゃないよ!(サクヤ)」
「うっ・・・・・・(マンショ・ミゲル)」
「確かに彼女の言うことは正しいけど、同じくらいあなたたちだけが悪いんじゃないわ・・・。結局みんな大人のエゴよ。子供たちを捨てたのもそう。(ユタカ)」
「聖女さま・・・私たちは、教えをこれからもまもります!フランシス様が・・・宗蘭様が(※悔恨し心根を入れ換え)立ち直られて、お帰りになるまで!(マンショ)」
「私もです・・・!(ミゲル)」
「そうね、偉いわ。彼(宗蘭)も・・・賢い、いい子ら(マンショ・ミゲル)に恵まれたわね・・・。」
「何が正しいか、悩みながら好きにやってみるがいいさ。俺もそうやって生きてるからよ・・・ま、奴隷制度ってのだけはムカつくけどな。(シマコ)」
「はい・・・。(このドラゴン・・・)(意外、という表情のマンショ)」
「あんた(シマコ)の生き様じゃ~当てになんないよ!(サクヤ)」
「ま、そりゃそうか!アハハハ!!(シマコ)」
「・・・・・・!!(少し笑みが戻った少年たち)」
日差しがステンドグラスから射し込む。温かい空気に包まれた教会、涙を流す二人の少年の目には、心なしか笑顔が溢れているようだった。
ガチャッ!(扉を開く音)
「・・・・・・!(テルヒコ)」
「おい、・・・テルヒコ無事だったのか!大丈夫かよ~!(シマコ)」
「こっちは万事オーケーよ!(両手で○サインするサクヤ)」
「・・・・・・(テルヒコを見て、わなわな弱々しく震えだすユタカ)」
一人開け放たれた扉の向こうから、日差しを背に受け彼女(ユタカ)らが談話していた十字の祭壇へ歩いてくるテルヒコ。
カッカッカッ・・・・・・(歩く足音)
「・・・・(この子・・・やっぱり、そうなのね。)(ユタカの表情を一瞬横目に見るサクヤ)」
「・・・・(テルヒコ)」
「あ・・・あぁあ・・・あの、(ユタカ)」
「聖女様、どうなさったのです?(ミゲル)」
「わ、わたしあのちょっと用事があるから・・・(ユタカ)」
そそくさと、アタフタこそ泥のようにおかしな意味不明の挙動で逃げ出すユタカ。
ガッ!(腕を掴む音)
(・・・・・・・)
少女の頃に逆戻りしたかのようなユタカのイソイソとばたつく細い腕を掴んだテルヒコの繊細な手。挙動がおかしくなり、慌てて教会を出ていこうとする彼女を、青年は引き止め、己の方へと寄せ真剣に見つめていた。
「力を貸してくれ・・・!(テルヒコ)」
「・・・・・・・え、あ・・・ぁあの(ユタカ)」
「俺には君が・・・必要なんだ!!(テルヒコ)」
(キミだけが・・・・・・!)
「・・・・・・(ニヤッと横目に笑うサクヤ)」
「(おいおいアイツもやんじゃんよ・・・!)(シマコ心の声)」
「ぁあ・・・・あ・・・(ユタカ)」
彼女の顔は、息を何分も我慢したかのような、蛸のように真っ赤に茹であげ鼻汁と痩せ我慢の限りをつくしても決壊する涙とで、めちゃくちゃな容貌であった。
「・・・・・う・・ぅぐ・・ぅうう・・・!(我慢できん。とばかりに顔を歪ませるユタカ)」
「ねえ?そういうことで、いいわよね。橘さん。(サクヤ)」
「は・・・はい・・・・・・!(ユタカ)」
「ーーーーーーーーーー!!!(ユタカの涙が溢れる)」
テルヒコの首筋、着物に押し付けられたユタカの顔、頬からは滝のような大粒の涙が止めどなくこぼれ落ち流れていた・・・。
「ありゃ、女神だな。どんなになったって美人はかわんねえな。(シマコ)」
「ん?なによ・・・(ムスゥっとしたサクヤ)」
「ああーぜんぜん違うぜ、ユタカは幼なじみなんだよ。(シマコ)」
「ヒュー!ヒュー!おめでとう!なんか(よく意味が)わかんないけどー!(子供たち)」
「・・・そんなんじゃ・・嬉しかったのよ・・・。(ユタカ)」
「そんなこと言うな・・。
俺は、思い出した。全部を・・・(テルヒコ)」
「えっ・・・(ユタカ)」
「キミがいなければ、俺は戦えない。(あの八幡にあって)わかったんだ・・・!(テルヒコ)」
奇しくも、教会の中での祝福。これから先数々の艱難辛苦を共に戦うこととなる聖女と、その力によって護られる戦士の、奇跡の再会、そして(契約=エンゲージ)であった。
「ここから、今日この時(宗蘭のもと)から奪い返す。どこにも行かせない・・・!(テルヒコ)」
バッリーン!ガシャーン!(窓を割り侵入してくる土蜘蛛たち)
突如先ほどの礼拝所からあふれでた土蜘蛛軍が子供たちのいる教会の中に入ってくる。
「ユタカ、陣頭指揮を頼む!みんないくぞッ!(テルヒコ)」
「ええ!みんな(子供たち)隠れて!(ユタカ)」
即座に教会に設備された、教壇下に隠された薙刀を蹴りあげ両手で握り構えたユタカは、自らの前方センターに立つテルヒコ、彼の左右に阿吽の仁王像のように二人立つシマコ、サクヤに対してこのときはじめて(指令)を下したー!
「創聖せよー!(薙刀を構えたユタカ)」
(初めて神獣鏡の形から太陽を模した本来の姿となるアマテライザー)
「創聖!!!(テルヒコ・シマコ・サクヤ)」
「ソウセイセヨ・・・!(ライザーポータブルのシステム音)」
バッリーーーン!!(一斉にシステムの波動を受け粉砕する教会のステンドグラス)
「アマテライジング・パワー・・・!(赤い光に包まれその“本当の姿”が現れる)」
白い強化金属繊維のボディに、太陽神天照のご来光を想起される赤き(肩)ショルダーアーマー。黄金(メタリックイエロー)の眼。
赤き太陽の戦士が、ユタカに秘められた女神アマテラスの光と、その絆を受け復活した。
「(テルヒコ=王子の姿が)赤く・・・(サクヤ)」
「なった!(シマコ)」
ついに、完全な姿をこの地上世界へ現した・・・。
日神、王子(アマテライジング形態)・・・・・!
ここに、誕生・・・・!
ピキュィイーーーン!(輝く戦士たち)
「いくぞォオーーーッ!!(アポロンソードを勢いよく構え走るテルヒコ/日神王子)」
「暴れるぜぇッツーーー!!!!(シマコ/ロッドを高速で振り回す水神ワダツミ)」
「二人とも抜かるんじゃないよッツーー!!(姫神サクヤ)」
「ハアァァアアーーーッツ!!!!!!(三人の戦士たち)」
新たな姿を得た、否“復元された”聖なる戦士日神王子(オージ)テルヒコが創聖したその力は、無数の敵を相手にしても格段にその動きから別人のようになっていた。
「なんだよ、俺の力までパワーアップしてんじゃん!なんかお得だよな!!(シマコ)」
「ふざけないで!こっちは屋内だと燃やせないから面倒だわ!(爪=サクヤクローで土蜘蛛をくノ一のように八つ裂きに切り裂くサクヤ)」
「アギャアーッツー!!!!(飛び掛かる土蜘蛛)」
「うわあッー!!(マンショ・ミゲル・子供たち)」
ビシュッッッ!!(空を斬る薙刀の音)
ドサッ!
「・・・・・・・・・(ユタカ)」
創聖者らに負けず劣らず、薙刀を振るうユタカは、創聖せずとも子供たちを守る力を備えていた。
「つ、ツエエ・・(マンショ)」
「橘さんやっぱり・・・!(ミゲル)」
「日神剣!テラセイバァーーッ!(テルヒコ)」
王子の叫びと共に、突如として時間軸を飛び越え出現する(アメノサカホコ)の化身、日神剣テラセイバー。
「救世神技、サンシャインズ・ストライク!!(テルヒコ)」
(諸々の禍事罪穢れを、祓えたまえッー・・・清めたまえェエーッツ!!!)
オージが言霊の力の一切を解き放ちその神聖なる剣を地面に打ち刺すと、その振動波、照り付ける光の力が一斉に部屋全面に爆裂し、土蜘蛛たちはこれまでない衝撃的な力と太陽そのものに触れたかのような熱気に溶かされ、そのマガは完全に消失していた。
ドガァーンッツ!(爆煙が巻き起こる玄関)
「ん?!どうしたんだ!(教会の外にいた通行人たち)」
「・・・!おい、こいつ村で神隠しにあった(土蜘蛛にされた為)弥七だ!なんでこんなとこな寝っ転がってんだあ?!(里人たち)」
新たな力、(日神剣テラセイバー)そしてシャイニングフィールドが放つ太陽神の燦然たる力は、すべて対象の邪気を打ち祓い、邪神の力を完全に奪い去る・・・。
「・・・うんわ!なんだおめぇらの格好は!(里人)」
爆風と共に破壊された教会の中から現れたのは、新たな(神技)を体得した、テルヒコ、ユタカら、そして難を逃れた子供たちであった。
「隠れてもムダだ!イブキ!!(テルヒコ)」
テルヒコがテラセイバーで空を十文字に切り裂くと、ムシカの里にぼろぼろに傷を負ったマガツ将軍イブキ(大友宗蘭)が時空間を裂いて出現もとい引きずり出された。
「う、うわあ!なんだあの怪物は!それにあの赤い兜(オージの姿のこと)みたいなのは!(人だかりとなるムシカの里内)」
「きさまら、よくもワシに恥をかかせてくれたな~!怪物だとォオ?!この神である、ワシが・・・そんなことは!(イブキ/大友宗蘭)」
「大友宗蘭・・・自らの野望のため純粋なキリシタンの人々を操り、邪悪なる教団の兵士に仕立てあげたマガツ将軍イブキ!(テルヒコ/日神王子)」
「俺たちの愛する聖地を汚すその計画、キサマの信じるマガツ神が許しても、この俺が絶対に許さん!!!!(テルヒコ/日神王子)」
魔王イブキ、そして宗蘭に言い渡されたテルヒコの(天使であり、天孫族)としての最初の口上。
「二人とも!!・・・完全神技だ!(テルヒコ)」
「な、なんだそりゃ?!(シマコ)」
「マニュアルは精神感応で秒の内送る!奴(イブキ)の魂を異次元に強制送還する!(テルヒコ)」
「オッケーオッケーだぜェエ!早くやれ!!(シマコ)」
「ぶっ飛ばせるのね?!つまり!(サクヤ)」
「おもいっきりやって!鬱憤・・・・晴らして!(ユタカ)」
照らされる三人の創聖者・・・立ち現れる巨大なオーロラ。
「いくぞシマコ、サクヤ!(テルヒコ)」
(シマッタ・・・・・!!!!)※九頭竜の意識
「・・・イブキ見るがいい、これが本当の“奇跡の力”だ!(テルヒコ)」
「完全神技、ゴッドエクステンション!!!(テルヒコ・シマコ・サクヤ)」
ジュウィイイーーーン!(※発生した光のフィールド)
終わった彼(宗蘭)の王国建設の夢・・・。
「なっ・・・このワシの夢がああああああ!!!!(イブキ/宗蘭)」
「ムジカァアアアアアアアッツーー!!!!(宗蘭)」
赤・桜・水色、出現する三つの光のラインが三角形(トライアングル)を形作り、大友宗蘭(マガツ将軍イブキ)を包囲する。
ムシカの里全体を覆い尽くすその巨大な数キロ包囲にわたる純白のエネルギーは、宗蘭をはじめとしたすべての里内の土蜘蛛の卵、この場所が抱えた一切の(禍事=マカゴト)を打ち祓い、そして清めるのだった・・・。
「ガアアアアアーーーッッッ!!!!(九頭竜王/宗蘭に取り憑いていたイブキの魂)」
(マタナ・・・・・オオトモ。オマエノムジカハモウナイ!)※にたりと笑うイブキの黒い影
「・・・こやつは?!(大友宗蘭)」
ドッゴォオォーーーーン!(半径数キロにわたり木々がへし折れ消失したイブキの邪気)
神技を受けた宗蘭の周囲はの大地は、数百メーター綺麗に抉られていた。
ズンッガガアアーーーッッ(憑き物が落ち、丸裸となり吹き飛ばされた宗蘭。)
翌日・・・。
「この悪党め!里から出てけぇー!(怒り狂った里内の人々)」
「わー!なんでワシだけがこんなことに!(宗蘭)」
戦のため、土蜘蛛にされた親や兄弟を持つ里の人々から追いかけられ(耳川の戦いで士気は皆無となり誰も家臣は助けてくれず)半泣きになりながら逃げ惑う子供のような宗蘭に、呆れるミゲル(ミゲルは奴隷問題がどうしても引っ掛かり、後年棄教する)。
誰もが当然のように、野心に生きていた戦国時代。
魔王たちから、押さえ込めぬ九州征服の抗えぬ欲求に漬け込まれていた宗蘭はイブキに“堕天”した記憶を半ば無くしており(日向進攻などを自分で決定した記憶はある)、自分がどうしてこんなに嫌われてしまったかパニックとなり、ついには必死に里人に焦りながら謝る始末であった。
「こ、このとおりじゃ!・・・祈祷の最中にへんな影が見えて・・・。わしがどんな侘しい負け戦をやったか教えてくれぬかそなたら!なあ!きいてる?(宗蘭)」
手をつき項垂(うなだ)れる宗蘭を、なんとも言えぬ複雑な表情で(見ちゃダメな光景)を見させられる罰ゲームであるかのごとく、テルヒコは見ていたが、やがて彼も膝をつき、宗蘭へ肩をたたき去り際、静かにこう伝えた。
「・・・馬鹿なことは考えるな。あんたはここ(日向国)より、地元にいくがいい。(テルヒコ)」
「豊後(大分)に戻ってから、出直すんだ・・・。時間をかけて、あの子達(マルコ・ミゲルたち後の少年使節団)といっしょに償いながら生きればいい。(テルヒコ)」
「本当ならここで、ぶちのめしてやりたいがな。(テルヒコ)」
「反省しろよ~・・・死んでもま、ただじゃすまないだろうけどな?(シマコ)」
「おのれおのれらあ!末代までの・・・。(宗蘭)」
「人生最高の屈辱じゃあ!・・・これより恥はかけん!いっそ斬り殺せぇえ!(涙を流す宗蘭)」
「・・・死んで楽になれるほど、神は甘くないわよ。(ユタカ)」
「俺たちは貴様のような馬鹿なこと(殺生)だけはやらない。せめて殺した分人を救うんだな・・・。(テルヒコ)」
「もう二度と来んなよ・・・・(イライラした顔のサクヤ)」
「来たらそんときゃ・・・ただじゃ(サクヤ)」
「すまぬ。なんと申せばよいか・・・この王が邪悪な魔王などに・・・、情けない。(宗蘭)」
「あ、あいつらが来た!(テルヒコ)」
「フランシス様ー!いきましょう我々も・・・!(ミゲル)」
「お前たち・・・・・!(宗蘭)」
「まだまだですよ、フランシス様。(ミゲル)」
「戦は、無論許されることじゃありませんが・・・。僕らも戦って、足掻いてみます!貴方たち四人のように。(マンショ)」
「テルヒコさん、橘さん。それでは私たちは、また・・・!(マンショ)」
「ああ、みんな達者でな。(テルヒコ)」
(愛のため命を懸ける“セイバー”か・・・。)※先日シマコらが神社で出会った謎のブロンドの男がテルヒコら四人をみつめる。
※(セイバー=救世主、または剣)
港まで迎えにやって来たマンショらを見送ったテルヒコは、一人静かに歩きだした。
スッ。(テルヒコの手をぎこちなく握るユタカ)
「ねぇ・・・・・・帰ろうよ。(ユタカ)」
現世に留まれるタイムリミットは余命あと一年。
(最後のその刻まで・・・・・!)
「(俺はもう、忘れたくない・・・!)(テルヒコの意志)」
サクヤからユタカに残された時間が少ないことを先日の夜教えられたテルヒコは、これまでの失われたその想いを改めて強く己の心へと刻んだ・・・。
「そんじゃ、寂しくなっけど・・・一時のお別れだな。(シマコ)」
「ちゃんとどんな状況なのか文でつたえるのよ?!また奴ら(マガツ神)が・・・魔王がいつ来るかもわからない。(サクヤ)」
それぞれに馬に跨がるテルヒコ・シマコ・サクヤら三人の創聖者は、それぞれが神器が導く方角へ。互いの道を往き、再び新たに生まれる魔軍の影と戦うため、旅立っていった。
戦い抜いた、その(戦士の絆)を胸にー!
「・・・いつでも、帰ってきなさいよ!2人の家はずっとここ(日向国)なんだから!(サクヤ)」
「ラブレターは贈るぜ!・・・俺の席は(定期的に帰るから)開けとけよ!(シマコ)」
「ほかんとこに永住したら化けて出て、連れ戻すからね!竜宮城でもよ!(サクヤ)」
「おまえ(テルヒコ)ら二人はこれから・・・(シマコ)」
「大丈夫。また来るわ・・・。(ユタカ)」
馬の上で共に微笑む、二人の姿・・・。
テルヒコとユタカは、互いに残された命と時間を共に最後の瞬間まで過ごすため、巡り来る彼らにとっての長い新たな戦いの日々のために、歩き出すことを決めていた。
「俺たちは、また必ず出逢う。神器が呼んだ絆は、またいつの日か・・・!(テルヒコ)」
「俺は、お前らといっしょに戦えて、親友(とも)になれてほんとに良かったよ・・・。(テルヒコ)」
「達者でぐらぜよお゛ぉぉお~!!おいユタカ!こいつの相棒は俺だけなんだからな!いやお前も相棒でいいんだけど!とにかくたまに連絡入れろよ!(涙目でむちゃくちゃな顔となったシマコ)」
「私の娘や孫たちがまた・・・。(サクヤ)」
走り出した三つの魂・・・!
ダダダダダダッッッ!!!!(馬の蹄の音)
「・・・・・ずっといっしょにいて。(ユタカ)」
愛馬に跨がるテルヒコの背には、その肩を握りしめ、これ以上ないほどの幸せを感じ目をつぶる、彼に添うユタカの姿があった。
(完)
ムシカの里、平時よりユタカの奉仕していた教会にて。
「・・・・そんな、フランシス様(大友宗蘭)がそんなことをなさっていただなんて、信じられません。(マンショ)」
「悔しいです・・・・・・!(マンショ)」
「え、フランシス様がどうなさったの?(女の子)」
「そうらんさまは王様だよ!(子供たち)」
「意外・・・。あんなだから、大友ってもっと野蛮で女好きなヤツかと思っていたわ。(サクヤ)」
「皮肉だよな。最初はそんな思いでいたのに・・・。(シマコ)」
ローマではキリシタンたちの(王)とまで呼ばれていた大友宗蘭。シマコに助けられた二人の少年(伊堂マンショとミゲル)たちは、教会に戻っていたサクヤとユタカの前で自らが信じたかつて理想郷をムシカに建国しようとした、(彼らの王)であった宗蘭の姿を打ち明けた。
「本当は、私たちは眼を背けていたのかもしれません。(ミゲル)」
「言われてみれば、確かに我が将軍は近ごろ人が変わったようであると、教会の者も言っていた。・・・あの方の苛烈な面は知っていますが、時折お見せになる優しい顔も私は見ています。(ミゲル)」
「だが・・・私たちは信仰を棄てるなどできません。ここの子らも、ここに住まう者らも中には戦で住む場所のない貧者は大勢います!奴隷になろうと、口べらしのため我が子を売る親が一番の悪ではありませんか!(マンショ)」
二人の少年キリシタンたちの苦悩する顔、絶望に満ちた表情に、サクヤは同情の念を寄せた。
「でも、大友家をあのままのさばらせては。理由がどうあれ神を建前に戦をするのが正しいはずはありません。子供たちも悪魔にまたいつ襲われるか。(サクヤ)」
「・・・あなたたちが絡んでいるとなればなおさら、私たちが黙っているわけにはいかない。(サクヤ)」
※マンショを輩出した伊堂家も島津家と別に都万宮神社(※モデル=都万神社)によく参っていた。
「ですが戦は領地を拡げるには仕方のないことで・・・これも我が主のお導き・・・(マンショ)」
「・・・ッお黙り!!他人様の命をぶっ殺しといて、屁理屈こねんじゃないよ!(サクヤ)」
「うっ・・・・・・(マンショ・ミゲル)」
「確かに彼女の言うことは正しいけど、同じくらいあなたたちだけが悪いんじゃないわ・・・。結局みんな大人のエゴよ。子供たちを捨てたのもそう。(ユタカ)」
「聖女さま・・・私たちは、教えをこれからもまもります!フランシス様が・・・宗蘭様が(※悔恨し心根を入れ換え)立ち直られて、お帰りになるまで!(マンショ)」
「私もです・・・!(ミゲル)」
「そうね、偉いわ。彼(宗蘭)も・・・賢い、いい子ら(マンショ・ミゲル)に恵まれたわね・・・。」
「何が正しいか、悩みながら好きにやってみるがいいさ。俺もそうやって生きてるからよ・・・ま、奴隷制度ってのだけはムカつくけどな。(シマコ)」
「はい・・・。(このドラゴン・・・)(意外、という表情のマンショ)」
「あんた(シマコ)の生き様じゃ~当てになんないよ!(サクヤ)」
「ま、そりゃそうか!アハハハ!!(シマコ)」
「・・・・・・!!(少し笑みが戻った少年たち)」
日差しがステンドグラスから射し込む。温かい空気に包まれた教会、涙を流す二人の少年の目には、心なしか笑顔が溢れているようだった。
ガチャッ!(扉を開く音)
「・・・・・・!(テルヒコ)」
「おい、・・・テルヒコ無事だったのか!大丈夫かよ~!(シマコ)」
「こっちは万事オーケーよ!(両手で○サインするサクヤ)」
「・・・・・・(テルヒコを見て、わなわな弱々しく震えだすユタカ)」
一人開け放たれた扉の向こうから、日差しを背に受け彼女(ユタカ)らが談話していた十字の祭壇へ歩いてくるテルヒコ。
カッカッカッ・・・・・・(歩く足音)
「・・・・(この子・・・やっぱり、そうなのね。)(ユタカの表情を一瞬横目に見るサクヤ)」
「・・・・(テルヒコ)」
「あ・・・あぁあ・・・あの、(ユタカ)」
「聖女様、どうなさったのです?(ミゲル)」
「わ、わたしあのちょっと用事があるから・・・(ユタカ)」
そそくさと、アタフタこそ泥のようにおかしな意味不明の挙動で逃げ出すユタカ。
ガッ!(腕を掴む音)
(・・・・・・・)
少女の頃に逆戻りしたかのようなユタカのイソイソとばたつく細い腕を掴んだテルヒコの繊細な手。挙動がおかしくなり、慌てて教会を出ていこうとする彼女を、青年は引き止め、己の方へと寄せ真剣に見つめていた。
「力を貸してくれ・・・!(テルヒコ)」
「・・・・・・・え、あ・・・ぁあの(ユタカ)」
「俺には君が・・・必要なんだ!!(テルヒコ)」
(キミだけが・・・・・・!)
「・・・・・・(ニヤッと横目に笑うサクヤ)」
「(おいおいアイツもやんじゃんよ・・・!)(シマコ心の声)」
「ぁあ・・・・あ・・・(ユタカ)」
彼女の顔は、息を何分も我慢したかのような、蛸のように真っ赤に茹であげ鼻汁と痩せ我慢の限りをつくしても決壊する涙とで、めちゃくちゃな容貌であった。
「・・・・・う・・ぅぐ・・ぅうう・・・!(我慢できん。とばかりに顔を歪ませるユタカ)」
「ねえ?そういうことで、いいわよね。橘さん。(サクヤ)」
「は・・・はい・・・・・・!(ユタカ)」
「ーーーーーーーーーー!!!(ユタカの涙が溢れる)」
テルヒコの首筋、着物に押し付けられたユタカの顔、頬からは滝のような大粒の涙が止めどなくこぼれ落ち流れていた・・・。
「ありゃ、女神だな。どんなになったって美人はかわんねえな。(シマコ)」
「ん?なによ・・・(ムスゥっとしたサクヤ)」
「ああーぜんぜん違うぜ、ユタカは幼なじみなんだよ。(シマコ)」
「ヒュー!ヒュー!おめでとう!なんか(よく意味が)わかんないけどー!(子供たち)」
「・・・そんなんじゃ・・嬉しかったのよ・・・。(ユタカ)」
「そんなこと言うな・・。
俺は、思い出した。全部を・・・(テルヒコ)」
「えっ・・・(ユタカ)」
「キミがいなければ、俺は戦えない。(あの八幡にあって)わかったんだ・・・!(テルヒコ)」
奇しくも、教会の中での祝福。これから先数々の艱難辛苦を共に戦うこととなる聖女と、その力によって護られる戦士の、奇跡の再会、そして(契約=エンゲージ)であった。
「ここから、今日この時(宗蘭のもと)から奪い返す。どこにも行かせない・・・!(テルヒコ)」
バッリーン!ガシャーン!(窓を割り侵入してくる土蜘蛛たち)
突如先ほどの礼拝所からあふれでた土蜘蛛軍が子供たちのいる教会の中に入ってくる。
「ユタカ、陣頭指揮を頼む!みんないくぞッ!(テルヒコ)」
「ええ!みんな(子供たち)隠れて!(ユタカ)」
即座に教会に設備された、教壇下に隠された薙刀を蹴りあげ両手で握り構えたユタカは、自らの前方センターに立つテルヒコ、彼の左右に阿吽の仁王像のように二人立つシマコ、サクヤに対してこのときはじめて(指令)を下したー!
「創聖せよー!(薙刀を構えたユタカ)」
(初めて神獣鏡の形から太陽を模した本来の姿となるアマテライザー)
「創聖!!!(テルヒコ・シマコ・サクヤ)」
「ソウセイセヨ・・・!(ライザーポータブルのシステム音)」
バッリーーーン!!(一斉にシステムの波動を受け粉砕する教会のステンドグラス)
「アマテライジング・パワー・・・!(赤い光に包まれその“本当の姿”が現れる)」
白い強化金属繊維のボディに、太陽神天照のご来光を想起される赤き(肩)ショルダーアーマー。黄金(メタリックイエロー)の眼。
赤き太陽の戦士が、ユタカに秘められた女神アマテラスの光と、その絆を受け復活した。
「(テルヒコ=王子の姿が)赤く・・・(サクヤ)」
「なった!(シマコ)」
ついに、完全な姿をこの地上世界へ現した・・・。
日神、王子(アマテライジング形態)・・・・・!
ここに、誕生・・・・!
ピキュィイーーーン!(輝く戦士たち)
「いくぞォオーーーッ!!(アポロンソードを勢いよく構え走るテルヒコ/日神王子)」
「暴れるぜぇッツーーー!!!!(シマコ/ロッドを高速で振り回す水神ワダツミ)」
「二人とも抜かるんじゃないよッツーー!!(姫神サクヤ)」
「ハアァァアアーーーッツ!!!!!!(三人の戦士たち)」
新たな姿を得た、否“復元された”聖なる戦士日神王子(オージ)テルヒコが創聖したその力は、無数の敵を相手にしても格段にその動きから別人のようになっていた。
「なんだよ、俺の力までパワーアップしてんじゃん!なんかお得だよな!!(シマコ)」
「ふざけないで!こっちは屋内だと燃やせないから面倒だわ!(爪=サクヤクローで土蜘蛛をくノ一のように八つ裂きに切り裂くサクヤ)」
「アギャアーッツー!!!!(飛び掛かる土蜘蛛)」
「うわあッー!!(マンショ・ミゲル・子供たち)」
ビシュッッッ!!(空を斬る薙刀の音)
ドサッ!
「・・・・・・・・・(ユタカ)」
創聖者らに負けず劣らず、薙刀を振るうユタカは、創聖せずとも子供たちを守る力を備えていた。
「つ、ツエエ・・(マンショ)」
「橘さんやっぱり・・・!(ミゲル)」
「日神剣!テラセイバァーーッ!(テルヒコ)」
王子の叫びと共に、突如として時間軸を飛び越え出現する(アメノサカホコ)の化身、日神剣テラセイバー。
「救世神技、サンシャインズ・ストライク!!(テルヒコ)」
(諸々の禍事罪穢れを、祓えたまえッー・・・清めたまえェエーッツ!!!)
オージが言霊の力の一切を解き放ちその神聖なる剣を地面に打ち刺すと、その振動波、照り付ける光の力が一斉に部屋全面に爆裂し、土蜘蛛たちはこれまでない衝撃的な力と太陽そのものに触れたかのような熱気に溶かされ、そのマガは完全に消失していた。
ドガァーンッツ!(爆煙が巻き起こる玄関)
「ん?!どうしたんだ!(教会の外にいた通行人たち)」
「・・・!おい、こいつ村で神隠しにあった(土蜘蛛にされた為)弥七だ!なんでこんなとこな寝っ転がってんだあ?!(里人たち)」
新たな力、(日神剣テラセイバー)そしてシャイニングフィールドが放つ太陽神の燦然たる力は、すべて対象の邪気を打ち祓い、邪神の力を完全に奪い去る・・・。
「・・・うんわ!なんだおめぇらの格好は!(里人)」
爆風と共に破壊された教会の中から現れたのは、新たな(神技)を体得した、テルヒコ、ユタカら、そして難を逃れた子供たちであった。
「隠れてもムダだ!イブキ!!(テルヒコ)」
テルヒコがテラセイバーで空を十文字に切り裂くと、ムシカの里にぼろぼろに傷を負ったマガツ将軍イブキ(大友宗蘭)が時空間を裂いて出現もとい引きずり出された。
「う、うわあ!なんだあの怪物は!それにあの赤い兜(オージの姿のこと)みたいなのは!(人だかりとなるムシカの里内)」
「きさまら、よくもワシに恥をかかせてくれたな~!怪物だとォオ?!この神である、ワシが・・・そんなことは!(イブキ/大友宗蘭)」
「大友宗蘭・・・自らの野望のため純粋なキリシタンの人々を操り、邪悪なる教団の兵士に仕立てあげたマガツ将軍イブキ!(テルヒコ/日神王子)」
「俺たちの愛する聖地を汚すその計画、キサマの信じるマガツ神が許しても、この俺が絶対に許さん!!!!(テルヒコ/日神王子)」
魔王イブキ、そして宗蘭に言い渡されたテルヒコの(天使であり、天孫族)としての最初の口上。
「二人とも!!・・・完全神技だ!(テルヒコ)」
「な、なんだそりゃ?!(シマコ)」
「マニュアルは精神感応で秒の内送る!奴(イブキ)の魂を異次元に強制送還する!(テルヒコ)」
「オッケーオッケーだぜェエ!早くやれ!!(シマコ)」
「ぶっ飛ばせるのね?!つまり!(サクヤ)」
「おもいっきりやって!鬱憤・・・・晴らして!(ユタカ)」
照らされる三人の創聖者・・・立ち現れる巨大なオーロラ。
「いくぞシマコ、サクヤ!(テルヒコ)」
(シマッタ・・・・・!!!!)※九頭竜の意識
「・・・イブキ見るがいい、これが本当の“奇跡の力”だ!(テルヒコ)」
「完全神技、ゴッドエクステンション!!!(テルヒコ・シマコ・サクヤ)」
ジュウィイイーーーン!(※発生した光のフィールド)
終わった彼(宗蘭)の王国建設の夢・・・。
「なっ・・・このワシの夢がああああああ!!!!(イブキ/宗蘭)」
「ムジカァアアアアアアアッツーー!!!!(宗蘭)」
赤・桜・水色、出現する三つの光のラインが三角形(トライアングル)を形作り、大友宗蘭(マガツ将軍イブキ)を包囲する。
ムシカの里全体を覆い尽くすその巨大な数キロ包囲にわたる純白のエネルギーは、宗蘭をはじめとしたすべての里内の土蜘蛛の卵、この場所が抱えた一切の(禍事=マカゴト)を打ち祓い、そして清めるのだった・・・。
「ガアアアアアーーーッッッ!!!!(九頭竜王/宗蘭に取り憑いていたイブキの魂)」
(マタナ・・・・・オオトモ。オマエノムジカハモウナイ!)※にたりと笑うイブキの黒い影
「・・・こやつは?!(大友宗蘭)」
ドッゴォオォーーーーン!(半径数キロにわたり木々がへし折れ消失したイブキの邪気)
神技を受けた宗蘭の周囲はの大地は、数百メーター綺麗に抉られていた。
ズンッガガアアーーーッッ(憑き物が落ち、丸裸となり吹き飛ばされた宗蘭。)
翌日・・・。
「この悪党め!里から出てけぇー!(怒り狂った里内の人々)」
「わー!なんでワシだけがこんなことに!(宗蘭)」
戦のため、土蜘蛛にされた親や兄弟を持つ里の人々から追いかけられ(耳川の戦いで士気は皆無となり誰も家臣は助けてくれず)半泣きになりながら逃げ惑う子供のような宗蘭に、呆れるミゲル(ミゲルは奴隷問題がどうしても引っ掛かり、後年棄教する)。
誰もが当然のように、野心に生きていた戦国時代。
魔王たちから、押さえ込めぬ九州征服の抗えぬ欲求に漬け込まれていた宗蘭はイブキに“堕天”した記憶を半ば無くしており(日向進攻などを自分で決定した記憶はある)、自分がどうしてこんなに嫌われてしまったかパニックとなり、ついには必死に里人に焦りながら謝る始末であった。
「こ、このとおりじゃ!・・・祈祷の最中にへんな影が見えて・・・。わしがどんな侘しい負け戦をやったか教えてくれぬかそなたら!なあ!きいてる?(宗蘭)」
手をつき項垂(うなだ)れる宗蘭を、なんとも言えぬ複雑な表情で(見ちゃダメな光景)を見させられる罰ゲームであるかのごとく、テルヒコは見ていたが、やがて彼も膝をつき、宗蘭へ肩をたたき去り際、静かにこう伝えた。
「・・・馬鹿なことは考えるな。あんたはここ(日向国)より、地元にいくがいい。(テルヒコ)」
「豊後(大分)に戻ってから、出直すんだ・・・。時間をかけて、あの子達(マルコ・ミゲルたち後の少年使節団)といっしょに償いながら生きればいい。(テルヒコ)」
「本当ならここで、ぶちのめしてやりたいがな。(テルヒコ)」
「反省しろよ~・・・死んでもま、ただじゃすまないだろうけどな?(シマコ)」
「おのれおのれらあ!末代までの・・・。(宗蘭)」
「人生最高の屈辱じゃあ!・・・これより恥はかけん!いっそ斬り殺せぇえ!(涙を流す宗蘭)」
「・・・死んで楽になれるほど、神は甘くないわよ。(ユタカ)」
「俺たちは貴様のような馬鹿なこと(殺生)だけはやらない。せめて殺した分人を救うんだな・・・。(テルヒコ)」
「もう二度と来んなよ・・・・(イライラした顔のサクヤ)」
「来たらそんときゃ・・・ただじゃ(サクヤ)」
「すまぬ。なんと申せばよいか・・・この王が邪悪な魔王などに・・・、情けない。(宗蘭)」
「あ、あいつらが来た!(テルヒコ)」
「フランシス様ー!いきましょう我々も・・・!(ミゲル)」
「お前たち・・・・・!(宗蘭)」
「まだまだですよ、フランシス様。(ミゲル)」
「戦は、無論許されることじゃありませんが・・・。僕らも戦って、足掻いてみます!貴方たち四人のように。(マンショ)」
「テルヒコさん、橘さん。それでは私たちは、また・・・!(マンショ)」
「ああ、みんな達者でな。(テルヒコ)」
(愛のため命を懸ける“セイバー”か・・・。)※先日シマコらが神社で出会った謎のブロンドの男がテルヒコら四人をみつめる。
※(セイバー=救世主、または剣)
港まで迎えにやって来たマンショらを見送ったテルヒコは、一人静かに歩きだした。
スッ。(テルヒコの手をぎこちなく握るユタカ)
「ねぇ・・・・・・帰ろうよ。(ユタカ)」
現世に留まれるタイムリミットは余命あと一年。
(最後のその刻まで・・・・・!)
「(俺はもう、忘れたくない・・・!)(テルヒコの意志)」
サクヤからユタカに残された時間が少ないことを先日の夜教えられたテルヒコは、これまでの失われたその想いを改めて強く己の心へと刻んだ・・・。
「そんじゃ、寂しくなっけど・・・一時のお別れだな。(シマコ)」
「ちゃんとどんな状況なのか文でつたえるのよ?!また奴ら(マガツ神)が・・・魔王がいつ来るかもわからない。(サクヤ)」
それぞれに馬に跨がるテルヒコ・シマコ・サクヤら三人の創聖者は、それぞれが神器が導く方角へ。互いの道を往き、再び新たに生まれる魔軍の影と戦うため、旅立っていった。
戦い抜いた、その(戦士の絆)を胸にー!
「・・・いつでも、帰ってきなさいよ!2人の家はずっとここ(日向国)なんだから!(サクヤ)」
「ラブレターは贈るぜ!・・・俺の席は(定期的に帰るから)開けとけよ!(シマコ)」
「ほかんとこに永住したら化けて出て、連れ戻すからね!竜宮城でもよ!(サクヤ)」
「おまえ(テルヒコ)ら二人はこれから・・・(シマコ)」
「大丈夫。また来るわ・・・。(ユタカ)」
馬の上で共に微笑む、二人の姿・・・。
テルヒコとユタカは、互いに残された命と時間を共に最後の瞬間まで過ごすため、巡り来る彼らにとっての長い新たな戦いの日々のために、歩き出すことを決めていた。
「俺たちは、また必ず出逢う。神器が呼んだ絆は、またいつの日か・・・!(テルヒコ)」
「俺は、お前らといっしょに戦えて、親友(とも)になれてほんとに良かったよ・・・。(テルヒコ)」
「達者でぐらぜよお゛ぉぉお~!!おいユタカ!こいつの相棒は俺だけなんだからな!いやお前も相棒でいいんだけど!とにかくたまに連絡入れろよ!(涙目でむちゃくちゃな顔となったシマコ)」
「私の娘や孫たちがまた・・・。(サクヤ)」
走り出した三つの魂・・・!
ダダダダダダッッッ!!!!(馬の蹄の音)
「・・・・・ずっといっしょにいて。(ユタカ)」
愛馬に跨がるテルヒコの背には、その肩を握りしめ、これ以上ないほどの幸せを感じ目をつぶる、彼に添うユタカの姿があった。
(完)