すると体を寄せてきた志勇。



「寒いんだろ?剛、冷房下げろ」



何食わぬ顔で運転席の剛さんに指示を出す。


あ、気を使ってくれたんだ。



「大丈夫、我慢できるから」

「我慢はダメだ、お前はもっと周りに甘えろ。
……しかし、仕事するぐらいなら俺に奉仕してくれりゃいいのによ」



志勇は指先で背中をツーっとなぞってきた。


突飛な行為にゾクゾクして背筋を伸ばす。



「だって、志勇も日中は仕事でいないでしょ。
わたしもさみしいから出かけておきたいの」



とっさに本音が出たけれど、それは日常のことだから慣れっこだ。


若頭として多忙極まりない志勇。


もっといっしょにいたいなんて言ったら罰当たりだから口を結ぶけど。



「俺がいなくて寂しいか。へえ……」



そんなとろんとした目で見つめられると気持ちが抑えていられなくなる。




「だったらいっしょにいる夜は甘ったるいほど可愛がってやらねえとな」

「っ、志勇」




身体の奥底であふれだす何か。


官能的な囁きに想いを焦がす炎は——





「はいはいお二人さん、ぼちぼち到着ですよー」




あきれた顔の冷静沈着な颯馬さんにより、鎮火させられてしまうのだった。