去っていく、レイの空気と入れ替わり、

ランとレンが、あたしの両側の椅子に座った。




「上様……」

ランが、あたしの右に座り、シクシクと泣いている。
その栗のような
茶色い可愛らしい頭を

撫でる。

「あれで、良かったんだよ」

一方で、左側にいるレンは冷たい。

「大奥の掟では、

 上様の滞在は限られているんだし」


けれども、レンの言うことは、もっともなこと。


「腕の怪我も、この大奥に来るたびに、悪化するだろうし」

怪我について触れた口調は、

レンにしては、柔らかな優しさが、にじんでいた。



『次は、だれを上臈御年寄にするつもりかよ』

ふたりとは違う声が、あたしの心の奥に直に響いた。


キヨ。