【好きよりも愛してる】15才で突然ママになった奈都(2)

琢哉さんと話したいのに、琢哉さんは私の話しを聞いてくれない。




琢磨の事も一方的に琢磨の我が儘だと決めつけて、




琢哉さんは怒るばかり、あんな琢哉さんは嫌いだ。




私はどうしていいのか分からなくて、




子供ころからよく知っている。




小児科医の小林愛子先生に電話した。





私の話しを聞いてくれた愛子先生が、家まで車で迎えに来てくれた。





私は愛子先生のお宅にプチ家出する事にした。





プチ家出は愛子先生の提案。




少し琢哉さんを脅かしてあげましょう。





琢哉さん驚くよね。





琢哉さんごめんね。







だって琢哉さんがいけないんだよ。




琢磨の気持ち分かってあげようとしないで、




あんな大きな声で怒鳴った。




琢磨が琢哉さんを恐がって近寄れなくなったんだよ。




琢哉さん琢磨の事どう思ってる。





琢磨はまだ小さいんだよ。




まだ赤ちゃんなんだから。




なのにお兄ちゃんになるからって、





一杯我慢させるの?





琢哉さん琢磨を抱き締めてあげて。





琢哉さんが琢磨の気持ち分かってくれるまで、私帰らないからね。





決めたんだから。





このままじゃ琢磨が可哀想。




琢哉さんお願いだから琢磨を迎えに来て、





そして一杯抱き締めてあげて!







『奈都ちゃん自分の家だと思って過ごしていいからね。


あ、そうだ、息子の遠矢紹介しするね。



遠矢高校行ってないのよ。


学校で色々あってね。学校へ行けなくなっちゃって、


奈都ちゃんとなら遠矢うまく話せそうな気がするのよ。



良かったら奈都ちゃん遠矢の友達になってやって。』





遠矢君ってどんなに子なんだろう。





なんか会う前からドキドキした。





愛子先生に連れられ私の前に現れた遠矢君は、




それはビックリするくらいなイケメンだった。





たけど遠矢君は私と視線を合わせない。





『奈都ちゃん遠矢は目が見えないのよ。



遠矢は生まれた時から見えないから、



感覚で家の中も平気で歩けるのよ。



外出も一人で平気だったんたけど、



今は無理かな。』





「遠矢君私奈都、よろしくね。



私の隣にいるのが、私の子供の琢磨だよ。』





琢磨が小さな手を出すと、遠矢君が、『よろしくね。』と琢磨の手を握った。








『琢磨君は甘えん坊だね。ママから離れないんだ。



琢磨君僕と遊ばないか?』




目が見えないのに何をして遊ぶのだろう?





私は心配でならなかった。




遠矢君は一冊の絵本を持って来た。





そして椅子に座り、琢磨を膝の上にのせ、





その絵本、【がちょうのたまごのぼうけん 】を読み出した。





目が見えないなんて思えない、





絵本を遠矢君は読んでいる。





又その声が優しくて、私まで絵本の世界に引きずり困れた。





琢磨もがちょうのたまごのぼうけんお話を静かに聞いている。






こんな琢磨を初めて見た。





愛子さんが、がちょうのたまごのぼうけんは、




私が点字で遠矢に読ませたの。





いつの間にか暗記しちゃったみたいでね。





絵本を読んだ後は琢磨と折紙をやりだした。






琢磨はまだ何も出来ないけど、遠矢君がトンボやカブトムシ、カエルなど一杯折るのを楽しそうに見ている。





これが又凄い。






目が見えないなんて信じられない。







こんなに静かに遊ぶ琢磨を始めて見た。





折紙の後はダンボールで何かを作り出した。





琢磨が入れるお家を作っている。





愛子さんがジュースとお菓子を持って来てくれた。





大好きなジュースもお菓子にも無視して家作りに必死な二人。





『久しぶりに見たわね、遠矢の笑顔。



奈都ちゃんありがとう。』




「そんなぁ、お礼言わなきゃいけないのは私の方ですから、



突然親子で押し掛けてごめんなさい。」





『奈都ちゃんそんな事気にしないで、



私奈都ちゃんから電話貰って嬉しかったんだから。



いても遠矢と二人切りだからね。



夕食何にしようかなぁ?



今日は賑やかになるぞ。』




「先生病院の方は大丈夫なんですか? 」





『大丈夫よ。息子夫婦に任せてあるから。



奈都ちゃん夕食すき焼きにでもする?



おうどん入れれば、琢磨君も食べれるしね。』








琢磨が私を呼びに来た。琢磨に手を引かれ、




ダンボールの家に入った。



椅子とか机、ベットまで作ってあった。




ダンボールの椅子に座ると、琢磨が私にお菓子をくれた。




私の隣に遠矢さんが座る。




「遠矢君ありがとう。こんなに楽しそうにしてる琢磨始めて見たよ。



琢磨一杯我慢して可哀想なんだ。」





すると、『一杯我慢してるのは奈都ちゃんでしょ。



そんな顔してたら子供が可哀想だ。



お腹の赤ちゃんにも悪い影響与えるよ。



ママはいつも笑ってない駄目だな。』





遠矢君に頭をなぜられた。




その時一粒の涙が頬をつたる。





「奈都ちゃん泣きたい時は泣いていいんだよ。」





そんな事言わないでよぉ。




もう涙は止まらない。









『僕は目は見えないけど、みんなの心が見えるんだ。


琢磨君はパパが大好きたけど、今のパパは好きじゃない。



琢磨はお兄ちゃんだから、ママに甘えちゃ駄目って言うパパが嫌い。』





凄いどうしてそこまでわかるの?





『奈都ちゃんは、今までもずっとずっと色んな事我慢して来たでしょ。



我慢する事が当たり前と思ってる。



でもそれは違うよ。



我慢ばかりしても決していい事にはならない。



奈都ちゃんもっと甘えなよ。



まだ奈都ちゃんは15才なんだから、



奈都ちゃんは自分はもうママだから、誰にも甘えられないと思ってるでしょ。




ママだって甘えていいんだよ。




泣きたい時は声を出して泣いていいんだから。』





遠矢君が私の顔を自分の胸に押しあてた。




私が声を殺して泣くと、バカだなぁって笑った。






『僕はね、この家の本当の子供じゃないんだ。



赤ちゃんの時小林医院の前に捨てられてたんだよ。



でも母さんは俺を自分の子供として育ててくれたから、



母さんには感謝してる。



僕、盲学校でなく普通の高校へ通っていた。



たけど僕をかばって階段から落ちた子が大ケガをして、



目の見えない子は盲学校へ行くべきだとPTAにもう反対され、



結局自主退学って事になった。



たけどまだ盲学校へ行く気になれなくてね。



こうして家でブラブラしてるんだ。



母さんには悪いと思ってるよ。』





遠矢君の話しを聞いていたら、なんか自分が恥ずかしく思えた。





遠矢君の胸の音を聞きながら、遠矢君違う高校へ行けばいいよ。





きっと遠矢君の思いが届く学校があると思う。





諦めないで頑張って見ようよ。







『奈都ちゃんありがとう。俺諦めないで僕が行ける高校を探してみるよ。』




「遠矢君私が思った事が分かったの?」





『ああ、分かったよ。』





「凄いね。」





『奈都ちゃんこのまま帰らなくていいの?



琢哉さん必死になって、奈都ちゃん探しているよ。



琢磨に怒鳴って悪かったって凄く反省してると思う。』





「何でそんな事まで分かるの?」





『何でだろうね?自分でも分からない。』





遠矢君が嘘をついているとは思えない。





琢哉さん今頃どうしているかな?





駄目駄目、今度だけは絶対に許さないんだから。





『奈都ちゃんも中々頑固者だね。』





やだ、遠矢君私の心読まないでよ!