「グッドモーニング」
片づけが終わり出来上がったばかりの席に着いた男性に挨拶をすると、
「おはようございます」
日本語の返事が返ってきた。

ここは日本の財閥が出資して建てた日系のホテル。
それだけに、スタッフもお客さんも日本人が多い。
街までは車で1時間だが、ヘリの送迎を利用すれば15分ほどで移動できることもあり観光客だけでなくお金持ちのビジネスマンの利用も少なくない。
実際今席に着いた男性客もそんな感じで、秘書らしき男性を伴っている。

「コーヒーとオレンジジュースをお願いします」
男性の側まで行くと、先に声をかけられた。

「地元産のハーブティーとシェフ特性のスムージーもお勧めですが?」

私がここで働くようになってからこの男性を見かけるのは3度目。
きっと仕事でやって来ているビジネスマンなのだろうけれど、180センチを超える身長にいかにも育ちのよさそうな端正な顔立ちと、時々見せる鋭い眼光が印象に残っていた。
そして、男性が注文するのはいつも同じメニューだから、せっかくなら色々なものを楽しめばいいのにと勧めてみた。
しかし、

「いえ、コーヒーとオレンジジュースをお願いします」

どうやら男性の気持ちは変わらないらしい。

「かしこまりました」

これ以上口を出すこともできない私は、飲み物の他に朝食の注文を聞いて席を離れた。