冒険者の王子は 旅と恋する

***

これは、冒険者チェースと
友人たちが、楽しそうに旅立つ、少し前の話。

いつものように、赤い髪をなびかせて、賢者ウルーチェは
同じ賢者であるバームスを訪ねていた。

同じ賢者であるが、
専門が少し違う。
ウルーチェは草や薬物を利用する攻撃が得意で
バームスは物理的な攻撃が得意だ。

「ふぉふぉ。ウルーチェ殿。
 ようやく、時が訪れましたな。」
「えぇ。バームス殿。
 宮廷魔術師の「夢見」から・・・ようやく・・」

バームスは、品のいい老人だ。
長いあごひげをすっと撫でて また、ふぉふぉ と笑う。
対するウルーチェは、2、30代の妖艶な美女。といった雰囲気だ。
これで、この二人は「同期」である。

「して、ウルーチェ殿。
 騎士フィロスが幽閉されておる「光の監獄」へ
 フランチェスコ王子と、騎士ダイナラスは導けたのかい?」

「えぇ。手筈通りにいっているはずよ。
 途中、「ジョイル=シャボンワーク」にも出会えたから
 彼も旅の道連れにしたわ。」

「ジョイル・・・あぁ、
 あの、「魔眼」持ちの「呪術のリザマート家」の子じゃな?
 竜人族の遠縁のシャボンワーク家に引き取ってもらった・・・
 光の性質も持ち合わせ居たから
 呪術と組み合わせて、いい魔術師になっていそうじゃな~」

「そうね。あちらのご当主にもかわいがってもらっているみたい。
 でも、彼が「予言」の・・・紫の呪いを纏いし子か、
 まだわかんないわよ?」

「そうじゃのぉ。「双子石の炎を操る鉄壁の舞人」は
 とらえられている騎士フィロスで間違いないじゃろうが・・・
 して、彼の容体は?」

「そうですねぇ・・・
 もし、フランチェスコ王子が「拒否」するのであれば
 余命は三か月ほど。
 騎士フィロスの魔力は「光の牢獄」のおかげで
 支えられているようなもんね。」

ふぉふぉ、と 賢者バームスは楽しそうに笑って
紅茶をごくり、と飲んだ。

「賢者ウルーチェ殿。
 フランチェスコ王子が断らないと知っていての発言かね?」

ふふ、と賢者ウルーチェも にこりと笑う。

彼らは幼いころから
フランチェスコを見ていた。ゆえに彼のやさしさを理解しているし、
その優しさに付け込もうとしている、ということも理解している。


「それにしても、
 不思議じゃの。延命の術は騎士フィロスの「命石」は
 受け付けないんじゃろ?
 いくら、フランチェスコ王子が光の術者として優れていても
 服従の術もかからぬのではないか?」
「そうねぇ。
 服従の術や使徒と術、強い契約の術がかかれば 
 主となるフランチェスコ王子から光の魔力を
 補充できるから、いいんだけど・・・」

名家『カシン家』の双子石をもつ騎士フィロス。
彼の家も周りも、
何も対処しなかったわけではない。

通常一つでも自分の命のように大切にする「命石」だ。
それが二つくっついたような無駄に短命にする呪われし石。
魔力の循環や、魔力を補う術を
いくらかけても、はじいてしまう。
騙されていたとはいえ、
光の魔力をもつ精霊が支えていてくれたからこそ
騎士フィロスは成長できたのだ。


「わしの術でさえ、受け付けぬものな。」

賢者バームスは長いあごひげを触りながら
ふぅむ、と考えるしぐさをする。

「そうねぇ。バームス殿。
 フランチェスコ王子は・・・優しいだけじゃない。
 術を「作り」「構成」させる発想力というのは
 ・・・アレッサンド王子も凌駕するじゃろぉ?
 そのせいで、次の王にという声が絶えないのじゃが・・・
 きっと、彼なら・・・」

「ふむ。そうじゃな。
 しかし、夢見で 予知されていたのは
 「第二王子」のそばに立つ騎士フィロスじゃろ?」

賢者バームスは
クッキーをぱくり、と口にほおばる。


「ふふふ。未来は変わるからおもしろいのじゃろ?
 賢者バームス殿。
 私は・・・その「夢見の予知」を・・・
 最後まで、希望を持ちたいものじゃ。」

「冒険者チェースの隣で笑う
 ただのフィロスと・・・
 シャボンワーク家のご次男、ジョイル。
 ふぉふぉふぉ。
 楽しそうじゃな?」



にこり、と
賢者ウルーチェが笑う。

ふぉふぉ、と賢者バームスも笑う。

王宮の賢者二人は
若い子供たちを思って、
しずかに、紅茶を飲むのであった。



 


**

「おばちゃーん!
 この肉 おいしぃね!
 ごはんお代わりちょーだい!
 野菜もうまーい!!さすが産地直送!」

「わかってるね!
 うれしいから、これも追加しちゃおう!」

「ありがとーー!!」


やったね!
追加のご飯と、
サービスのポテトフライもどさっと
さらに乗せてもらう。


と、にっこり笑いながら
向かい合わせに座っている
ジョイルとフィロスに、ほれ、ほれ、
と 分けてやる。

おいしいものは三分こだな。


「・・・さすが・・・
 山の幸も、海の幸も豊富なモントレー領ですね。
 チェースが行こうといったのもうなずけます。」

ジョイルが、パクパクと食べ進める。

「私も、モントレー領は二度目ですが
 隣の魔領地から流れている川の幸もおいしいですよ。」

フィロスがにこにこと
上品にポテトをつまむ。


よかったよ。
ここに行きたいって言って。


ちなみに、俺はちゃんと
力を抑えてるし、変化の耳飾りをしてるから
髪の毛も茶色。

平凡な見た目だな!
これで目立たないと思ったら
思わぬ問題が。


「あのぉ・・・あちらで、ご一緒しません?」
「あ、ついでに お友達も・・・」

なんて、かわいーー声で
逆ナンパされているのは


「あ・・・申し訳ない。
 私は、この子たちと一緒に食事をとるので
 あなた方のご希望には添えない。」

はいはい、眉間にしわを寄せて
びしっと、断ってもイケメンオーラがでてますよー。
フィロスが もってもて、なんですねー。

女子たちが行ったあと、
そっと耳打ちする。

「なぁ、フィロス。
 好み子のがいたら俺らに遠慮しなくていいぞ?」
「・・・そうですよ?
 僕らでたいていのことは対応できますし。」


「とんでもない。
 私が、チェース君と、ジョイル君とともに
 過ごしたいんですよ。」

にこーーっと微笑まれた。

ふわりと優しい赤の髪が揺れて
こいつこそ、変化の魔法が必要なんじゃねぇか、
なんて思いながら
食事を堪能した。


「へー、じゃぁ、
 国境付近の森は侯爵様の敷地なんだ?」

「そうそう。だからなぁ
 冒険者が受付して入れるぐらいだなぁ。」

食堂に来ている冒険者らしいおっさんに声をかけた俺は
情報収集だ。

無精ひげのおっさんは、
親切にも地図をちょいちょいと書いてくれた。

「冒険者登録してないとはいれんぞ?
 ひょろっとしたそっちの連れと、
 戦えなさそうな友達と、
 坊主の三人じゃ、戦うのは無理じゃねぇのか?」

あー、確かにフィロスは細いもんな。
髪の色も淡い赤だから雰囲気 弱弱しい優男だしな。
王宮にいたときはキラキラしたピンクだったけど、
今は少し淡い赤って感じだな。
俺と魔力共有したから純粋な「火の魔力」が減ってるかもなぁ。

ジョイルは、おとなしそうに見えるからなぁ。
「結界」まで使える優秀魔導士なんだけど。

ま、俺は俺で 坊主だけど、
簡単にはやられないよ?自称 凄腕。

「だいじょーぶ。
 これでも冒険者だし。
 森も、奥に行かないようにするしね。
 いろんな植物があるんでししょ?」

「がはは、そうか。
 まぁ、あそこの森はいろんな貴重種がいるしな、
 薬草もほうふだしな。」
「精霊もいるし、魔力スポットもあるし
 魔石も薬草もおおいしなぁ。」
「欲張って魔族領に近づかなければ大丈夫よ。」
「あんまり奥に行くと黒の魔力が多くて
 こちらの生命力まで吸い取られるからきをつけな」


べつのお客さんも次々に教えてくれる。

ありがたい。


「そうなんだー。とりあえず、行ってみる。
 ありがとうねーー。
 おばちゃんも!ありがと!
 ごちそうさま!!」

待ち構えていたかのようにタイミングよくフィロスが立ち上がる。

「では、まいりましょうか。チェース君、ジョイル君。」
「・・・はい。チェース。
 荷物、どうぞ。」


ジョイルからひょい、と受け取って
フィロスは さっさと会計をして 外に出た。

さぁ、うわさの「森」というやつに
出発だーーー!



マジで、森じゃん!!
通称 領主の庭。広いな!

領主の屋敷の別邸ってやつの一階が
なんと、この地域の
冒険者ギルドだった。

ちなみに、本邸はもっと奥にあるらしいよ。


もう、ここで森の入り口なんだけど、
森に入るなら
ギルドで「受け付け」をする。


「っていうかさーー。
 この「受け付け用紙」ってさ・・・
 マジの「魔法契約」じゃん。
 大丈夫かよーー。
 あ、三枚くださいな。」

命を落としても、責任取りません、系の。
ちなみに、冒険者じゃなくても森には普通に入れるようだ。
責任は取れないから、この契約書を書いて入る みたいな。

申し込み用紙を受け取りながら
受付のおねーさんが、こっそり聞いてきた。

「あの・・・お忍びですよね?」

「え?」

「ご主人ですか?・・・素敵ですね。
 途中の防衛のラインで、そこを越えなければ
 魔獣や野生の動物も出にくいですので比較的安全ですよ。」

ふふふ、と顔を緩ませる彼女。

えっと・・・・?

フィロス→貴族の子息
ジョイル→フィロスの弟的なの
チェース(俺)→従者

ほほう、俺が一番下っ端に見えるわけだ。
ある意味大成功だけど、複雑。

「どうしました?チェース君?」

「なんでもありませんよ!フィロス様!」

フィロスが怪訝そうに
首をかしげる。

まぁ、たしかに フィロスの顔と雰囲気で
一般人ってのは、無理があるよなー。
髪もあわい赤だし(薄い髪色ほど魔力が高い→貴族)

さしずめこのおねーさんには、
貴族の息子が冒険者と気まぐれに森に散歩ぐらいにしか見えないだろう。

まぁ、森も奥に行かなければ比較的安全らしいし、
何なら観光コースにもなってるみたいだしな。




「・・・う・・・わぁ・・・
 すごい森ですね。」

「ジョイルも、わかるのかー?
 すげぇ綺麗だな。」

森の中はすごい精霊っていうの?
キラキラが多いって言うの?

まぁ、ジョイルも光魔法の才能あるしな。
キラキラだけじゃなくて、
マーブル模様にオレンジや青、黒とかあって
なんだろ、魔力が渦巻いているけど
綺麗、って感じ。


「そういえば、さっきの受付でもさぁ、
 フィロスとジョイルは、「貴族のお忍びですよね!」みたいな
 俺は、立派な従者に見えるらしいから
 そういう設定がいいかなと思って。」

「いっ いやいやいや、チェース君!!それは、
 私が、気を使います!やめてください!」

「えーー、でもなぁ、見た目からして
 フィロスはもう魔力強いですよーって感じじゃん。」

「・・・あぁ、確かに。
 フィロス様って感じがしますよね。
 僕も、そのほうがぼろが出なくていいと思います。」

「ぇえ!ジョイル君まで・・・」

「おいおい、ジョイルも上品だって。
 でも、フィロスはなー、目立つからなぁ。
 俺の耳のやつみたいな「髪色を変える」みたいな魔法具作るか?」

なんだかんだ言いながら
視界が開けて、湖が目の前に広がった。


靴を脱いで、軽くズボンの裾をたくし上げる。
「あぁ、綺麗だ。」
ちゃぽん、と
泉に足を浸す。

「チェース君、あまり奥に行くと危ないですよ。」

「はーい。フィロス。
 あ、あれかなーー?とってくる」

はい、荷物持ってって。
と言いながら カバンと、上着を脱ぎ棄てて
フィロスに渡す。

ざぶん!

水しぶきが広がる。


「ちょ、チェース!!
 フィロス様。これもお願いします。僕も行ってきます。」

慌ててジョイルも上着と靴を脱ぎ棄てて飛び込む。





俺さぁ、いわゆる学校に通ってた時に
友達っていうか、一応身分的には『従者』的な公爵家の友達がいたわけよ。

そいつが言ってたんだよな。

『うちの屋敷の近くの森の奥の泉に咲く
 ビュランスの花が一番好きですね。』
『え?俺、おいしいもの聞いたんだけど』
『はい、食べれるんですよ。
 しかも、手折ってしまうとすぐに散ってしまうので
 そのまま食べるしかありませんので、
 献上は致しかねますが…』

水中に咲く花か、
色は綺麗な黄色らしい。
甘いのか?
さっぱりした風味らしい?
へーーそのまま食べるのか?デザート?


『へぇ、お前の領地に行ってみたいな』
『ぜひ。屋敷をあげて、おもてなし致します』

みたいな話だったんだよな。
味の創造はできなかったけど
不思議な花もあるんだなと思ったんだよな。

多分、このはな。

ハスのような、
でも、綺麗な黄色。

思わず、
学園で隣で勉強していた友人を思い出す。
あぁ、あの時は俺「第二王子」として頑張って・・・は、無かったんだけど、そんな俺につかされても、ふてくされることなく
勉強も対人も 優秀だったあいつがよぎる。

ざぶざぶ、と
水をかき分けてその花をそっと触る。

「・・・チェース。
 いきなりなんですか?!」

「お、ジョイル。この花だと思う!
 俺が気になってたやつ。
 あ、折るなよ?すぐに散るらしいぞ。
 花びらだけ取って食べるんだと。」

「えーー?食べれるんですか?」

「た、ぶん?」

「・・・はぁ。じゃ 僕が毒見しますので・・・」

「いいって。俺がやばかったらすぐに
 回復よろしくね?」

「ちょ!!!」

ぱく。

花びらを一枚口に含む。

ふわぁああぁ。

口の中で静かに溶ける。

レモンティーのような清涼感。
ほんのりとした自然の甘味。
何よりさぁっと綿あめのようなくちどけ。

俺、結構おいしいスイーツ食べてきたと思うけど
これは・・・新感覚だな。

「・・・おいしい。
 おいしいよ!ジョイルも食べてみろって。」

「・・・えーー?」

眉間にしわを寄せたジョイルもぱくりと食べる
「あ、ほんとだ。
 おいしい・・・。」


池の端からフィロスが声をかける。

「チェースくーーん?ジョイルくーーん??」

「フィロス! お前も食べてみろよ!」

「食べ・・・?」


俺は軽く三枚ほど花びらを取って
ざぶざぶと、
岸にいるフィロスに近づいて
ほれ、と口に持ってってやる。

「・・・はなびら?」

思いっきり眉間にしわを寄せるフィロスに
「まぁまぁ」

ぐいっと口に押し込む。

「あ、あまい。」
「だろ?」

新触感ってやつだな。

「・・・チェース。花を茎ごと手折ると
 しわしわになりますね。不思議な花だ・・・
 この花びらは、酸味が強くなりますね。」

ジョイルの手元にはしわしわになった、黄色い花。

「まぁ、お前んとこの「光の花」もすごいけどな。」

ジョイルの地元の花は綺麗な光輝く花だ。
毎日「防御の光」の魔法をかけて
花まつりの日に一斉に空に浮かせて、飛ばす。

その祭りがきれいなんだよな。
花びらがキラキラ舞って
光に反射して、幻想的。


ざばーーっと
池から上がると、
フィロスが「失礼します。」と言いながら
俺と、ジョイルに、乾燥の魔法をかけてくれた。

おぉ。助かる。
俺もできるけど、ぶわーっと 突風みたいになっちゃうんだよな。

微妙に体だけに、魔力で温風を這わすとか、細かい魔力の動きは
難しいって。

「ありがとな。フィロス。」

「いえ。はい、ジョイル君も。」

「わ。ありがとうございます。」



『ね?ね?
 だぁれ??』

ふわり、と 聞こえた声に
思わず、三人に緊張が走る。

がさがさ、空気と木がかすれる。

『かすかに・・・のにおいがする。』


ぶわん。と
三人のまえに、まるい光が現れる。

「な?!チェース!さがって!」
「チェース君!!」

「うわっ」

俺はぐいっと押しやられて
フィロスとジョイルが一歩前に出る。


丸い光が小さくなって、
ウサギのような、猫のような
謎の黄色い生物?がちょこん、と表れた。

「おいおいっ。二人とも!
 別に俺を守らなくても・・・て、
 すげーーなぁ!!「精霊」だ!!」


あわーい 黄色のふわふわのそいつは
猫のような形をとりながら空中に浮いている。

『君たちはだぁれ?』

「精霊・・・私はフィロスと言います。精霊様。」
「・・・わたしはジョイル=シャボンワークと言います。精霊様。」
「俺は・・・今は、チェースと言います。精霊様。」

精霊に「嘘」は禁物だ。
嘘をつくと、その「気」を嫌がって
逃げていく。

逃げるだけならいいけど、
不愉快だーといって
異常気象を起こしたり、爆発させたりとかするから
精霊と出会って「問われたら」嘘をつかないというのが
世界の常識だ。


今は、チェースだから
間違ってないけどさぁ、
内心どっきどきだよ。



精霊はふわふわとウサギのような形になりながら、
フィロスの前に来る。

『へんなの。
 つながってるの?』

「はい。私の「主」はあちらにいます
 えぇと、チェース君です。精霊様。」

『ふぃろすは、魔獣?
 それとも、人?精霊?
 なんで、しばられてるのー?
 こんな不思議な魔術はじめてーー
 なんでー?
 ちぇーすも、へんなのー
 キラキラ嫌いなの?なんで閉じ込めてるの?
 へんなのーー?』

くるくるーと 精霊はフィロスの周りをまわって、
オレの周りも回った。

フィロスは苦笑しながら、
「それは、秘密ですよ。
 精霊様。」

なるほど、問いに答えないというのもアリか。
「嘘」さえつかなければいいものな。
さすが、元「騎士フィロス」いろんなこと知ってるなぁ。

『ふふふ。ふぃろすは変なにおいーー
 ずぅっと 精霊の呪いがついてたの?
 やだーーなにしたの?その割には魂はきれいねー
 嫌な人じゃ なさそうなのにーー』

「!!っ!! そ、それは」

「へー。すごいな。精霊同士って
 そういうのわかるの?」

俺はその黄色っぽい猫っぽい精霊に聞いてみた。

『そうだねー。たまにわかるよ。』
「どんなのかとか、詳細もわかる?」

『うぅーん?近くの仲間たちのじゃないから
 わかんなーーい。
 森にはあまり いない精霊かな?
 そーゆー「呪い」はかけないと思うよー?』

「そういった、呪い?」
今度はジョイルがその精霊を見つめた。

そういえば、ジョイルはもともと「呪術」も得意だしな。

『えっとねーー
 頭を奪っちゃうの。
 考えられなくなるの。
 でもねー、そうすると、魔力はおいしくなくなるの。
 魂も黒くなっちゃうし。』
「・・そ、そうなんですか、精神に作用する「精霊術」・・・」


フィロスがじっと精霊を見つめた。

「あの、精霊様。私にかけられていた術の影響は・・」
『ないと思うよーー。ちぇーすとつながってるから
 魔力も魂もきらきらー。』

精霊は楽しそうに
ぴょんと俺たちの周りをはねた。

『ふぃろす はねー。きらきらと赤い木の実がいっぱいで
 おいしそうな魔力なのーー。
 じょいるは、きれいな紫がぶわーーってしてるの。
 ちぇーすが一番きらきら
 でもぎゅーっとしてる?秘密なのーー?』

くい、と首をかしげる。
かわいいな!精霊様!!


森から出るときに、退出の受付をするために
ギルドに立ち寄る。

そうしないと、「行方不明」扱いになるしな。



「はい。ご帰還 お疲れ様です・・・って
 そ・・そっ それは?!!」

あぁ、やっぱりそうなりますよね。

すぐに、受付のお嬢さんに止められる。


「はぁ。どうやら、
 懐かれたようで。」

フィロスは困ったように苦笑する。
綺麗に笑うもんだから、
受付のおねーさんが「あぅ・・・」って顔を真っ赤にした。

ですよね。
この、イケメンめ。

その、イケメンフィロスの柔らかそうな髪の毛の上には
出会った精霊様が小さな子猫ぐらいのサイズでちょこんと乗っかっている。
形はウサギと猫とリス って感じ。
ふわふわっとアイボリー色。かわいい。


「あの、精霊様の持ち出しは禁止でして。
 そもそも、森の外に出ると、「瘴気」にやられてしまう恐れが・・・」
「ですよねぇ。どうしましょうかね」

フィロスも困ったように
うーーん。と なる。
精霊様はそんなことに気もせず、フィロスの淡いピンク色の髪の毛に
わちゃわちゃとじゃれている。

かわいいな。おい。

俺とジョイルは「ですよねーー」てするしかない。

精霊様は何を思ったか
フィロスから離れない。
いっしょにいくーって駄々っ子のように暴れたんだよね。

仕方ないから、頭にのっけて森を出たんだけど、
ギルドで止められた。
うん。そんな気はしてたよ。

俺でも止めるわ。

『あのねーー?フィロスのね
 頭は気持ちいの。キラキラのあったかいの。
 だから、動かないよ?』
精霊様は、
フィロスの頭の上に、ちょこん、と立って
受付のおねーさんに告げる。
かわいいな。おい。

困ったおねーさんは、上に連絡したようだ。

すぐに、こちらへ、と後ろに通される。

「あー。。。面倒なことになったらいやだな。」

「大丈夫ですよ。チェース君。」
「・・・フィロス様が、言っても説得力がありません。
 チェース 腹をくくりましょう。」

おいおい、フラグじゃねぇよな?
なんて思いながら、俺 フィロス チェースの順に
部屋に通された。

すぐに、ノックがして「失礼する。」

入ってきたのは、明るいオレンジ色の髪の毛の
仕立てのいい 二十代ぐらいの青年・・・身のこなしからみて
貴族であるのは確かだ。
あと、いかついおっさん髪が青みがかっているし
筋肉もすげーな。多分ギルド長とかだろうな。


「どうぞ、掛けて。
 えぇと、冒険者・・・フィロス?
 君がこのチームのリーダー?
 私は、ここの領主代理 ローディゴール=セリア=モントレーだ。
 精霊様に関しては領主の判断が必要なため私が来させてもらった。」

「オレは このモントレ森のギルド長の
 ジャイロだ。」

とりあえず、腰かけて、
「えぇと、私は冒険者登録はしていないんですが・・
 フィロスと言います。」
「俺は、冒険者チェース。」
「僕は、冒険者ジョイルです。」

あ、そういやジョイルは住んでいたシャボンワークの町で
冒険者登録してたんだと。
俺よりランクは上だった。
光の魔法とか、魔力操作が得意だから「サポート役」として
重宝されてたんだと。