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※3巻のネタバレ情報がふくまれます。
3巻をチェックしてから読むのがおすすめだよ!まだ読んでいない人は注意してね。
水素ちゃんのいいところは、誰にでも平等で、いつもカラッとしていて、結構間抜けなところ。
そして、とびきり優しい心を持っているところ。
小学生の頃から、水素ちゃんは正直、そんなに目立つタイプの子ではなかった。
(なんかいつも鉱石を眺めてはニヤニヤしてたし)
でも、そんな水素ちゃんの素朴な良さを、俺だけが知っている。
俺だけがわかっている。
だから、中学生になっても絶対大丈夫。
俺が一番特別なはず。
そう、思って元素学園に入学したのにーー。
「「水素ちゃーん、今度こそ僕達の間に座ってよねー!」」
「ダメダメ、水素っちは今日女子ズと固まって座るから」
「じゃあ俺は後ろにしよーっと」
「「あー! 炭素くんサラッとズルい!」」
……なんだ、あれ。
予想外な展開すぎるんですけど。
入学して早々、俺は思い知らされることになった。
授業に関する全クラス合同説明会。
まだ入学して一週間しか経っていないというのに、水素ちゃんの周りには、いつの間にか人だかりができていた。
しかも、どういうわけか水素ちゃんを取り合っている。
その光景を見た時は、思わず自分の目を疑った。
というかーー普通にムカついた。
「は? 何あれ……」
フードを深く被って睨みつけるも、その声は届くことなく……。
待って、なんであんなに仲良さげなわけ?
てかまだ入学して一週間しか経ってないよね?
みんな馴れ馴れしくない?
え、もしかして、パシリにされたり、たかられたりしてるのか?
最初はそう思った。
けれど水素ちゃんの、困ってはいるけど嫌がってはいない反応を見て、すぐにそれが違うと分かった。
「なんで……」
ーーヤバい。焦りと怒りと嫉妬でモヤモヤする。
あっちから気づいてくれるまで待とうと思ってたけど、早々に我慢できそうにないんだけど……ガチで。
立ち上がって水素ちゃんに話しかけに行こうかと思った、その時ーー。
「ねぇあの子って誰? 水色の髪の地味な子……」
近くの席の女子が、こそこそ話しているのが聞こえてきた。
「あー、なんかAクラスで浮いてる子だよね? 一人だけ超〜〜、一般人って感じの」
「そーそー、なんであんなに酸素ズ、炭素くん、リンちゃん達と仲良いのかなー」
………………は?
水素ちゃんのこと、なにも知らないくせに何言ってんの、コイツ。
「なんかお金持ちとか頭良いとかでもなさそうだし、なんでAクラスにーー」
「……おい」
たまらず、低い声を出すと、女子達はビクッと肩を震わせた。
フードで顔を隠しているから、二人は余計に怪訝な顔で俺を見ている。
「Aクラス入れなかったからって……」
「ひがんでんじゃねぇぞ」
……あ??
言葉の続きを、勝手に誰かに言われた。
驚いて声がした隣を見ると、変なアイマスクをつけたまま机に突っ伏してる紫髪のツインテール女がいた。
……いつからそこにいたんだ、コイツ。
女はむくりと起き上がると、アイマスクをそっとずらしてから、再び「ひがんでんじゃねぇぞ」と全く覇気のない声で棒読みした。
女子二人はぽかんとしてから、「な、何よこの子」とムッとした声を上げる。
「人の悪口を言うとね……あなた達……明日でっっっっかいニキビできるよ……」
「「え!?」」
驚き、あごやおでこを触る女子二人。
そんな二人の様子を見て「フ」と鼻で笑ってから、その女は再び眠りに入った。
……なんなんだ、コイツ。
あまりにも突然すぎる乱入だった。
俺が呆気に取られている間に、ようやく遅れていた教師が教室に入ってきた。
「はいはい静かにー。授業を始めますよー」
なにか言いたげな顔をしていた女子二人も、一旦前に向き直った。
この変な女……、ただ寝ぼけてたのか?
それとも、本気で毒を吐いてたのか?
俺並みに口が悪い人間とか、初めて見たんだけど。
「変なやつ……」
完全に引いた感じで吐き捨てると、女はピクッと動いてから……、
「お前も明日ニキビできるよ」
と、まさかの吐き捨て返してきた。
「ーーハァ?」
思わず立ち上がり大きな声を出すと、教師に「こら、そこうるさい!」と注意された。
「あ……、すいません」
水素ちゃんがキョトンとした顔でこっちを見ていることに気づいて、カーッと顔が熱くなり、すぐに座り直した。
しかもその間に、紫髪ツインテール女は、また熟睡してるし……。
最悪。
クソ恥ずかしい思いした……。
「ハァ……」
まあいいか。
こんな女と関わることなんて、二度とないだろうし。
名前だって知らなくていいし。
ただ、水素ちゃんのことを庇ったことだけはーー唯一、評価してやるけど。
そう思いながら、もう一度遠くにいる水素ちゃんを見る。
相変わらず、周りには人が集まっている。
俺が知っている水素ちゃんの良さを、みんながすでに知っている。……かもしれない。
水素ちゃんにひとりぼっちでいてほしいわけじゃない。
だけど、なのに、面白くない。
待って俺ってもしかして……結構性格悪い?
いや違う、焦ってなんで気弱になってんだ。
モヤモヤを払うように、ブンブンと首を横に振った。
「待っててよ、水素ちゃん」
水素ちゃんの一番の特別は俺だってこと、この学園中の人に知らしめてやるから。
そのために、最高のタイミングで俺がこの学園にいることを水素ちゃんにバラしたい。
……まあ、誰にでも優しい水素ちゃんだから、誰か特別な人を作ったりはしないってこと、わかってはいるんだけど。
それでも、ここまで追いかけてきたんだから。
「諦め悪いんだよね、俺」
水素ちゃんの唯一の悪いところって、俺みたいな面倒な人間に執着されやすいところかも?
なーんか、この紫髪ツインテール女も、おんなじにおいがするんだよな……。
終わり