アリスは走った。
森の中を、木々を避けながら、躓きながらも。

背後からハニーが声をかける。


「アリス嬢!エヴァ・イニーネを誘拐して何をするおつもりですか!?」


「リルは言ってたの!いつからエヴァを憎むようになったのかわからないって!
だったらエヴァに聞くしかないじゃない!!!」


ハニーは顔がにやけるのを必死でこらえた。
ああ、やはり違う。

アリス・ヴァレンタインは選ばれた人間なのだと。


「リル、すごく辛そうだったの!悲しそうだった!

結末がどうなるかなんてわかんない!
もしかしたら想像もしないことが起こるかもしれないし!
でも、何もしないよりはマシでしょ!?」


そう言って強く駆け抜けるアリスの背中を見て、ハニーは心に何かが沸々と湧き上がるのがわかった。


「ええ、そうですね。」


彼女はこんなにもたくましく生きている。
嬉しくて仕方が無かった。


「何処までも付いて行きましょう、アリス・ヴァレンタイン。」


ハニーは呟いた。


アリスは何かに急かされる様に走った。
何かに追われるように。


今、何かしなければリルは永遠に光を浴びることが無い気がした。

かつての自分のように。
あの洞穴の中にいたような生活。


ハニーがそこから救い出してくれたように、アリスも救いたかった。



光の美しさを、知って欲しかった。